EU の実践規範と欧州における AI の未来

本日、汎用 AI に関する EU の実践規範に署名する意向を発表します。ただし、今後行われる適合性評価で、現行版が AI 委員会により正式に承認されることが条件となります。この規範は、AI 開発者が EU AI 法を遵守するための枠組みです。AI 法とその義務について詳しくは、こちらの入門ガイドをご覧ください。
同時に、AI の可能性を生かしたいという欧州各国政府や企業の非常に強い意欲に応え、欧州の AI の未来を築く取り組みを進めるため、「OpenAI for Countries 欧州展開」を開始します。
OpenAI のテクノロジーは、欧州の数百万人にとって欠かせないものとなっています。EU 加盟国は、サブスクリプション利用者、API 開発者、法人顧客のいずれにおいても、世界有数の市場です。欧州全域で、人々、開発者、各種機関、スタートアップ、大手企業が日々、次のような形で経済機会を切り開いています。
- サノフィとの提携(新しいウィンドウで開く)などを通じて、命を救う治療法の開発を加速し、研究者による新薬設計の迅速化を支援しています。
- フランスのパリ政治学院やドイツのマックス・プランク協会など、欧州の主要な研究所や大学で科学研究を加速しています。
- エストニア全土の中等学校に AI を導入し、ESCP ビジネススクールの教員(新しいウィンドウで開く)が個別最適化された授業計画を作成して、生徒と向き合う時間を増やせるよう支援することで、教育を改善しています。
- Parloa や Pigment のような新世代の AI 企業が OpenAI のテクノロジーで自社プラットフォームを強化し、世界で競争できる、活力ある欧州のスタートアップ・エコシステムを構築しています。
実践規範は、欧州が 4 月に発表された EU AI 大陸行動計画を推進し、すでに現れている AI の効果をさらに広げる道を開きます。
欧州は域内の AI 人材を育成・支援し、将来の企業、雇用、収益を担う地元の AI 開発者や起業家を後押しするとともに、より多くの人々に AI ツールを届け、欧州の前進につなげなければなりません。
欧州では、規制ばかりが注目を集めることがあまりにも多くありました。今こそ流れを変え、この機会を生かして欧州のイノベーターや開発者を後押しし、欧州の未来を築くときです。
AI は電力にも似た国家基盤の中核技術であり、生産性を高めることで経済を変革し、切望される成長をもたらします。欧州から経済的価値を流出させた現代デジタル時代の従来技術とは異なり、AI は価値を生み出す技術です。広く一般に提供すれば、人々がより多くを成し遂げるためのツールとなり、経済全体のパイを拡大します。
欧州の課題は、欧州発、欧州主導、欧州のための AI を人々が形づくり、その恩恵を受けられる環境を整えることです。
その目標を達成するには、欧州の AI ファースト経済を将来けん引する域内のスタートアップや中小企業が、実践規範と AI 法のリスクベースの枠組みを可能な限り簡単かつ円滑に遵守できるようにする必要があります。OpenAI は、こうした次世代企業を支援するため、さらなる簡素化と調和を提唱してきました。これらの企業は欧州発、欧州主導、欧州のための AI の鍵を握るため、今後もその懸念に寄り添います。
最終的に、実践規範は AI 大陸行動計画と整合し、大胆で統一された欧州 AI 戦略の基盤となることで、最大の効果を発揮します。AI 委員会と、同委員会が代表する加盟国に対し、このビジョンを受け入れて実現し、AI を繁栄と進歩の原動力にするよう呼びかけます。
実践規範と行動計画を一体として、欧州に必要な AI インフラの整備を推進し、人々や企業、とりわけ開発者やスタートアップが世界で競争し、主導するためのツールを確保しなければなりません。
EU は、規制環境が AI の導入速度や、エネルギー、学習データなど AI に必要な資源の確保に与え得る影響を評価する必要があります。これは、欧州の競争力を確保し、米国との間に長年存在する生産性格差(新しいウィンドウで開く)に対処するうえで重要です。
EU の戦略は、このインフラの構築に必要な資本投資を呼び込むため、長期的な確実性と予見可能性も提供しなければなりません。
可能性を進歩に変えるため、実践規範を足がかりとして、実質的な経済効果をもたらす欧州 AI の開発を加速する「欧州 AI インフラ・キャンペーン」を開始します。
OpenAI のEU 経済ブループリントが明確に示したとおり、適切なビジョンと実行力があれば、欧州は AI を活用して成長を促し、次の技術時代をけん引する世界的リーダーの一角を占められると、OpenAI は強く確信しています。
5 月には、データセンター、人材のスキルと能力、地域のスタートアップ支援など、AI インフラの整備を目指す世界各国を支援する取り組み、OpenAI for Countriesを開始しました。今、欧州での取り組みを本格化する準備が整いました。
夏から秋にかけて欧州の政府、企業、関係者と協議し、次の事項の実現に取り組みます。
- データセンターの処理能力:欧州が AI 分野をけん引するには、必要なインフラを整備しなければなりません。そのため OpenAI は、欧州に次世代 AI インフラを構築する EU の AI ギガファクトリー構想で、コンソーシアムへの参加意思表明書を提出しました。これらのプロジェクトは初期段階にありますが、欧州の未来を支え、新たな地域産業を育成し、主権的なコンピューティング能力を提供できる可能性があります。
- AI を活用した教育:世界ではすでに数百万人の生徒と教員が、学習を一人ひとりに合わせるために ChatGPT を利用しています。OpenAI は、ChatGPT Edu を全国の中等学校に導入する世界初の取り組みでエストニア政府と連携できることを誇りに思います。他の EU 各国政府からも、同様の導入に関心が寄せられています。
- 政府との戦略的パートナーシップ:OpenAI は公共部門向けサービスの拡充を続けており、AI 時代にふさわしい官民連携の新たなモデルを欧州各国政府とともに構築したいと考えています。OpenAI はすでに EU のデータレジデンシーに対応し、地域の文化や言語に合わせて ChatGPT をカスタマイズできる機能を提供しています。欧州各国政府が地域の価値観に沿って、主権上のニーズに応じた AI の導入と活用を進められるよう連携したいと考えています。
- 国家 AI スタートアップ基金:画期的なアイデアを欧州発の成功事例へと育てるため、OpenAI は、意欲ある政府とともに有望な AI スタートアップへ初期投資を行う国別の専用基金の設立を支援したいと考えています。各基金は、地域の創業者を支援し、最先端技術への早期アクセスと技術支援を提供することで、国の優先課題に貢献し、雇用、収益、新産業を生み出します。
- AI の普及:9 月にはブリュッセルで Allied for Startups や幅広いエコシステムとともに、欧州経済のあらゆる分野での導入促進という一つの目標に焦点を当てた AI 政策ハッカソンを開催します。
OpenAI は、欧州全体の AI 目標の実現に向けて役割を果たすことに尽力しており、夏から秋にかけて、これらの取り組みの進捗をさらにお知らせします。
実践規範への署名は、欧州の人々がインテリジェンス時代の経済的・社会的恩恵を十分に享受できるよう、高性能で利用しやすく、安全な AI モデルを提供するという OpenAI の決意を示すものです。
OpenAI は常に、透明性、説明責任、安全性を最優先にモデルを開発してきました。これらの原則は実践規範にも反映されています。
実践規範への署名は、ブレッチリー宣言(2023 年 11 月)とソウル・フレームワーク(2024 年 5 月)の双方への署名を含め、OpenAI が過去数年にわたり先駆けて導入してきた業界最先端の安全性・透明性対策の多くをさらに強化するものです。
ブレッチリー・サミット後、OpenAI は包括的な安全・セキュリティ手順である Preparedness Framework(2023 年)をいち早く公開した企業の一つです。この枠組みでは、フロンティア AI モデルを安全に展開するためのアプローチを示しています。ソウル・フレームワークと、社内の説明責任およびガバナンスの枠組みを継続的に見直すという方針に沿って、2025 年 4 月には更新版の Preparedness Framework を公開しました。
また、テクノロジーを責任ある形で開発・展開するため、次のような業界最先端の安全対策も構築しています。
- OpenAI は以前から、主要なリリースに合わせて詳細なシステムカードを公開し、モデルができることとできないこと、検証したリスク、まだ解明を進めている領域を示しています。
- 安全性評価ハブでは、OpenAI のモデルに関する安全性評価の結果を一般公開しています。
- OpenAI のレッドチーミング・ネットワークには外部の専門家が参加し、モデルに厳しいストレステストを実施
- Model Spec(新しいウィンドウで開く)では、人間の価値観と民主主義の規範を反映するよう、OpenAI がモデルの振る舞いをどのように設計しているかを紹介しています。
これらの取り組みは、業界の安全基準の策定と、実行可能な実践規範の策定に大きく貢献してきました。OpenAI は今後も安全性へのアプローチを継続的に改善し、世界中のあらゆる場所で、すべての人の利益となるよう責任を持ってテクノロジーが利用されることを目指します。


