AI 統合により Figma はいかにしてデザインを転換し、クリエイティブを強化したか
Figma Head of AI Products の David Kossnick 氏との会話

新しいエグゼクティブファンクションシリーズでは、AI による変革を推進するリーダーたちの視点を特集しています。
Figma はチームが協力してアイデアを世界最高のデジタル製品やデジタル体験へと実現できる場所です。Figma の Head of AI Products である David Kossnick 氏に、デザインにおける AI の影響、クリエイティビティの強化、Figma 社員向けの AI の流暢性の構築について伺いました。
AI とは、プラットフォームの変換であると同時に中心となる機能であると述べられていますね。AI はどのようにデザインを変えていますか。また Figma はこの転換において自社をどのように位置づけていますか?
AI によりデジタル製品を作成することがますます簡単になってきているため、優れたデザインが重要な差別化要因になります。ただし、デザインというのは単なるピクセルではなく、技能です。共感、ワークフローの理解、問題解決が必要です。
そこで、製品内でのテキスト編集、画像生成、自動名前変更、サイトビジュアルなど、Figma 全体に AI を組み込んでいます。これにより、制作がより速く、直感的になり、より多くの人が利用できるようになります。
同時に、AI はプラットフォームの変換でもあります。Figma はデジタル製品の構築を念頭に設計されています。そこで、最初の原則からワークフローを見直すことにしました。
例の 1 つが Figma Make(新しいウィンドウで開く) です。これは、言語、画像、または構造化されたフレームから実用レベルのコードを生成する prompt-to-app ツールです。このツールはコーディング担当者、そしてそれ以外のデザイナー、PM、エンジニア、マーケティング担当者にも、技術的な制約に縛られることなく、アイデアをプロトタイプ化して表現するための手段を提供します。
AI というのは置き換えではなく、副操縦士(コパイロット)であるということが良く言われます。この考え方は創造性の強化にどのように影響しますか?
Figma の強みの 1 つはその制作に対する深いコミットメントです。ユーザーはあらゆるディテールを自身で調整することができます。AI を利用することで、これをビジュアルレイヤー以外にも拡張し、言語、ビジュアル、コードを含めることで、コード作成ツールのようなツールを追加し、ユーザーが AI 支援のコードを書いて公開できるようにする「コードレイヤー」となっているのです。
「AI エージェントの優れた点の1つは、私たちの能力を拡大し、煩雑な作業を処理し、新しく何かを始めさせてくれるということです。」
AI エージェントは手間のかかる作業を処理してくれますが、多くのツールではそれ以降のカスタマイズに制約があります。Figma では、言語、ビジュアル、コードまですべてのレイヤーを完全に編集することができ、自身のビジョンに合った制作を維持することができます。クロスモダリティのワークフローもサポートしているので、得意分野がコーディング、デザイン、言語のいずれであっても、自身の特徴を失うことなく、すべての作業に対応することができます。
最終的には、Figma で制作される製品は人間向けの製品です。判断、共感、嗜好をもたらすのは人間です。人間を副操縦士ではなく、真の操縦士たらしめる特性です。
「AI のおかげでより速く実験することができ、アイデアの実現をより先まで進めることができますが、人間の判断、共感、技能、嗜好のすべてが、副操縦士ではなく操縦士になるために重要です。」
Figma Make と Dev Mode MCP Server は AI をエンドツーエンドのワークフローに統合するうえで大きなステップでした。デザイナーや開発者は、どのようにしてコードを通じて AI と対話することを望んでいましたか?
デザイナーと開発者のコラボレーションというのは、単にミスコミュニケーションを避けるだけでなく、ユーザーにとって価値のある、実際に使用される製品を出荷できるかどうかが大事です。Figma Make では考えられる多くのアイデアをチームで検証・テストできるので、解決策について一致したときには、正しいものを構築できるという強い確信が得られています。
Dev Mode(新しいウィンドウで開く) により、CSS やトークンなどの構造化データを使用してハンドオフが合理化され、MCP(新しいウィンドウで開く) がそれをさらに先に進めるために、開発者が試作コードを運用環境に対応したフルコンテキストのコードに変換できるようにします。手動でコピーして貼り付ける必要はありません。
Make は主にプロトタイプ作成向けに設計されていますが、多くの場合デザイナーはとても正確に手順を指示することができるので、エンジニアはコードを直接コピーして、それを開始点にエンジニアリング用のハンドオフ成果物を作成できます。
さらに広く見れば、Figma は常に複数ユーザー向けに設計されており、主に単一ユーザー向けの初期の AI ツールとは異なります。現在は、他のユーザーを創作プロセスに招待することができる、より協調的な AI 体験に向けて進めています。
コラボレーションおよびマルチプレーヤーのアイデアをサポートする AI ツールについてどうお考えですか?
マルチプレーヤーは Figma の中核であり、Figma Make のようなツールとコードレイヤーはリアルタイムのコラボレーションを AI に対してでもサポートするように構築されています。2人のユーザーが同じファイルに対して作業を行い、お互いのアバターを表示し、AI アシスタントと一緒に共同制作を行うことで、ミーティングを共有のインタラクティブな構築セッションに変えることができます。
画像生成も FigJam と Slides のハイライトとなっており、チームはブランドに合ったビジュアルを共同で作成したり、サイドバイサイドで繰り返したりすることができます。ここには文化的な側面も存在します。従来の FigJam 記念カード制作のように、チームメンバーは OpenAI の画像編集機能を使用してアバターをリミックスして、面白い、パーソナライズされた贈り物を作成できます。このようなクリエイティブな慣習は、多くのツールでは実現できないような方法で、つながりやチーム精神を育みます。
レイヤーのネーミング、コピーライティング、ビジュアル検索、生成などのデザインプロセスがますます AI を利用するようになるなかで、プロのデザイナーの役割はどのように進化していくとお考えですか?
専門技能、つまり共感、嗜好、さらに検証して改善する能力が最も求められるスキルです。アイデアを試すためのコストが下がるので、アニメーションからインタラクションまでのあらゆるディテールを卓越性の機会と捉えて、可能性を掘り下げることができます。ノイズが大きくなる中で、優れた技能が際立つのです。
また、開発者から問題解決者への変化が現れています。複数の役割が1つになり、より多くの人が制作者になってきています。デザイナーがコードを書くようになり、その将来はビジョンキャリヤへと進むでしょう。単独でアイデアを概念から実行まで実現できる人達です。
メディア・エンターテインメント分野の同僚が言っていたのですが、アイデアを生み出してそれをプレゼンテーションするための初期コストが高く、あまりに多くの努力が必要なために、多くのアイデアがチャンスを与えられずに消えていってしまうと。今は AI があるので、このボトルネックは解消されつつあります。創作者はより自由にアイデアを検討して共有できるので、アイデアが溢れだしています。
まるでマーベルユニバースのドクター・ストレンジが将来の可能性をすべて見通しているようです。つまりデザインにとっての AI は、無数の可能性を試し、特定の課題に対して最適なもの選択するためのツールとなっています。
Figma の AI はどのようなユーザーまたはユースケースにとってこれまで不可能なだったことを可能にしますか?
すでに素晴らしいが例が、リリース前から出現しています。社内テストの段階で、コーディングもデザインの経験もない人事チームの社員が Workday API を見つけ、Figma Make を使用してわずか2時間でゲームを作成してしまったのです。これは、Workday から取得した4つの顔と名前を表示し、それをマッチングさせるゲームなのですが、新入社員がチームメンバーを知るのに役立つ楽しい方法です。今では研修プロセスの一環となっています。
これは社内のどのツールチームも優先することのなかったアイデアだったのですが、AI が壁を低くしたおかげで実現したのです。これは、素晴らしいアイデアをもった技術者でない人達が、エンジニアリングチームの助けを必要とせずに、現実的かつ使用可能なツール、場合によっては展開可能なツールを構築できることを示しています。
予期しないようなユースケースが次々と現れ、それはとても感動的です。Figma Make や Figma Design などのツールは、これまでであれば眠っていたアイデアを人々が表現して実現できるようにします。
AI の流暢さをどのように育成していますか?以前は不可能だったことが実現できるのだと人々が理解できる瞬間がありますが、これまでに得た教訓はありますか?
当社のカルチャーの中心にあるのがドッグフーディングで、Figma Make ではこれを最大限投入しました。全社の競争として「Great Figma Bake Off」を実施し、すべてのタイムゾーンでライブのジャムセッションをしながら、素晴らしいプロジェクトを構築しました。このハンズオンサポートが、AI に興味のある社員、特にこれらのツールを使用したことのない社員が自信を深めるのに役立ちました。社交を目的としたインセンティブとライブサポートが人々のつながりを構築するのに大きな役割を果たしたのです。
それに加えて、全社的に ChatGPT Enterprise を導入しました。これは変革をもたらしています。市場開拓チームはプレゼンテーションの改善やメールの下書きなどに利用し、すべてが安全でプライバシーに配慮した環境で実現しています。
さらに Maker Weeks も行っています。これは製品チームだけでなく、誰でも参加できる1週間のハッカソンです。動画からヘルプ文書まで、あらゆるものを Slack が統合された GPT で作成しています。すべての人が試し、失敗し、学習する機会を得られるので、ハンズオン体験の壁が低くなり、特に中心となる技術的な役割以外の人達にとって有用です。
AI の流暢さの文化を育むというのは哲学的な問題でしょうか、あるいはその進捗状況を測る他の方法がありますか?
Figma における AI の流暢さはその文化から始まります。私たちが採用するのは、新しいツールを試して調べる意欲を持った人達で、それをサポートするために学習のための専用の時間と予算を確保しています。義務はいっさいありません。
「私たちは未来を生きるチームを構築しています。常に全力でものごとを良くする方法を探そうとする、新しいツールや新しいテクノロジーについて前向きなデザイナーのチームを構築しました。」
人事チームが Workday を使ったゲームを作成したような成功事例を強調することで、わずか10分の実験でも現実の影響をもたらすことができることを示しています。多くの場合、最初の一歩が最も困難なのです。
安全に試してもらうことができるように、実験ツール用のコンプライアンスファーストパスを作成しています。データの使用にガードレールを設定してあるため、チームは抵抗なく新しい AI をテストすることができます。ほとんどのツールは完璧に動作することはありませんが、実験のコストを下げることで、組織全体で本当の価値を見つけ出し、イノベーションを促進することができます。
社内で AI の流暢さを構築するための素晴らしい洞察について教えていただきましたが、利用する側についてはいかがでしょうか。企業はその製品や体験にどのように AI を組み込むべきでしょうか?
AI のユーザーおよび構築者の両方として、私たちは草の根の実験が導入を推進するのだということを学びました。従業員は ChatGPT などのツールを非公式に利用し始め、それが安全でサポートされた方向性への要求となり、最終的には ChatGPT Enterprise への導入とつながりました。
重要な点は、AI ワークフローを試してそれがいかに簡単かに気が付いた人達は、構築する自信を持つということです。この意識の変化が、社内および顧客向けに、有意義な AI 導入を拡大するためのキーとなります。
最後に、個人的には Figma でのワークフローに AI をどのように利用されていますか?
レビューメモの確認、連絡の下書き、Deep Research まで、あらゆるものに ChatGPT を毎日使っています。多くの場合、「この問題は通常どうやって解決しますか?」と聞いて解決策の分野を素早く探ります。
またプロトタイプ作成とアイデアの検討には Figma Make を利用し、複雑なスレッドを要約して組織全体で意思統一を図るために Slack AI を使っています。さらに Grammarly もいつも使っています。AI のような感じがしないかもしれませんが、私の毎日の文章作成をワンクリックで改善してくれています。
Figma では OpenAI API を、FigJam AI だけでなく、そのプラットフォーム上の画像生成機能にも使用しています。さらに、組織全体に ChatGPT Enterprise を展開して、従業員の AI の流暢さを高めています。


