Booking.com と OpenAI が旅行体験の大規模なパーソナライズを実現
Booking.com は、自社のデータシステムを OpenAI の LLM に連携させて、より便利な検索、迅速なサポート、旅行者の意図に沿った旅行体験を実現しています。
世界最大級の旅行マーケットプレイスの Booking.com では、世界中の何百万人もの旅行者がフライトや宿泊先、アクティビティを1つのサイトで簡単に手配できるようにしています。
同社は OpenAI を活用して、頼れる旅行のパートナーになる機会を見いだし、目的地探しの段階から、旅行者が自分でも気づいていなかった「行きたい場所」や「やりたいこと」を提案しています。
Booking.com のプロダクトマーケットプレイス担当シニアディレクター Adrienne Enggist 氏は次のように話しています。「2022年に ChatGPT のサービスが開始された時は、なんていうか、ゾクゾクしました。ブロードバンドが普及し始めた頃を思い出して、これは、旅行に対する人々の関わり方を大きく変えるチャンスだと感じたのです。目的地探しの難しさという課題をついに解決できると確信しました」
Booking.com では、旅行の計画を簡単かつ直感的に行えるようにと、OpenAI の AI を活用したソリューションをこれまでに複数発表してきました。

Booking.com は10年以上前から機械学習を利用してきましたが、これまでのモデルやルールベースのシステムでは、特に目的地探しを始めたばかりの段階で、ユーザーの微妙な意図を読み取るのが難しいと感じていました。
「ロマンチックでありながら、ちょっと安っぽい場所に行きたいということもあるでしょう。しかし、『ハート形のベッド』や『エルビスの物まね芸人』というフィルターはありません。従来の検索は、このような意図を読み取るようには作られていないのです」(Booking.com の CTO の Rob Francis 氏)
旅行者向けに数百種類のフィルターが用意されていましたが、探したいものが明確に分かっていないと使いようがありません。しかし、大規模言語モデルの普及が、会話するような形で目的地を探し、意外な選択肢を発見できる新しい体験へ移行する機会をもたらしました。
「当社は最終的に検索結果を予約に結び付ける段階は得意としていたのですが、目的地探しは難しかったのです。お客様がご自身の希望を模索している段階、つまり、もっと早い段階でお客様と出会う手段が必要でした」と、Enggist 氏は話しています。

Booking.com は、AI Trip Planner を実現するためにすぐに担当チームを編成しました。
- 既存の ML インフラを活用:チームは、OpenAI の GPT モデルを宿泊施設に関する Booking.com 独自のデータ(料金や空き状況)と連携させました。
- 迅速な開発サイクル:目的地の発見と旅程表作成が可能な最初の試作品を、わずか10週間で発表しました。
- 自然言語を重視:会話型プロンプトを理解し、日付、場所、宿泊施設の空き状況などの構造化データにマッピングするよう、このモデルを学習させました。
AI Trip Planner に「ヨーロッパでロマンチックな週末を過ごすには、どこがおすすめ?」のように自由な形式で質問をすると、おすすめの目的地、旅程表が作成され、Booking.com のデータベースから空き状況と料金のデータがリアルタイムで表示されます。
構造化データと非構造化データの両方を活用している点が画期的です。「料金、空き状況、キャンセルポリシーなどの構造化データを、長い時間をかけて最適化してきましたが、これにユーザーのレビュー、自然言語による説明などの非構造化データを加えて、この両方のデータをまとめた形で提案できるようになりました」と、Enggist 氏は述べています。
Booking.com のチームの動きの速さも特徴的です。「素晴らしいコラボレーションでした。OpenAI の API から始めて、ハッカソンを開催し、10 週間後には AI Trip Planner をリリースしていました。これを実現できたのは、単に技術的な課題を解決するだけでなく、何ができるのかを一緒に考えてくれるチームだからです」と、Booking.com のプロダクトマーケットプレイス担当バイスプレジデントの Joe Futty 氏は話しています。
AI Trip Planner はその後、より複雑なリクエストやより深いパーソナライズを扱えるように拡張されました。「Booking.com の過去20年間の旅行予約データを見ると、ヨーロッパで上位15以内にランクインする旅行先は非常に観光客が多いことが分かります。AI を利用すると、それほど遠くない場所に、同じくらい魅力的で、観光客が多すぎず、新たな発見に満ちた何百カ所もの目的地を見つけることもできます」(Enggist 氏)
AI Trip Planner の成功は、AI を活用したその後のプロダクト開発の基盤となりました。本日付けで Booking.com は、OpenAI のモデルを利用した新たな主力機能をリリースしました。
ソリューション | 課題だったこと | 仕組み |
スマートフィルター | 従来の検索はドロップダウンメニューとチェックボックスから選ぶ形だったため、旅行者が選択できる項目数が限られていました。 | GPT‑4o mini を利用するため、「夕焼けの景色」や「素晴らしいジム」のような自然言語のプロンプトを理解します。
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Property Q&A | 多くの旅行者は、宿泊施設について具体的な質問を持っていますが、固定的な一覧からは簡単には答えることができません。 | OpenAI の LLM を、Booking.com のユーザーが作成したコンテンツや施設の説明に対してファインチューニングしました。
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AI Review Summaries | 宿泊施設を比較する際に、何千件ものレビューがあると、それを整理して理解するは大変です。 | GPT‑4o mini がレビューを分析して要点をまとめ、清潔さ・立地・設備といった主要なテーマごとに整理します。
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Help Me Reply | ゲストとのコミュニケーションに対応し、回答時間を短縮します。 | オープンモデルを利用して、自動回答とカスタマイズ可能なメッセージテンプレートを生成します。
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将来的な AI 開発に向けて、Booking.com は強固な基盤も築きました。オープンモデルが Booking.com の既存の API とデータインフラストラクチャに統合されたため、新機能のテストと反復処理をスピーディーに行うことができます。
長期的なパフォーマンスデータはまだ収集中ですが、Booking.com は顧客のエンゲージメントと満足度がすでに目に見える形で向上していることを確認しています。
- エンゲージメントの向上:AI Trip Planner により、ユーザーがパーソナライズされた旅程表を調べる際のプラットフォーム滞在時間が長くなりました。
- 検索時間の短縮:スマートフィルターにより、具体的な結果を見つけやすくなり、検索時間が短縮されました。
- カスタマーサポートへの問い合わせ件数の減少:Property Q&A により、アプリ内の回答の精度が高まり、サポートへの問い合わせ件数が減少しました。
- 予約の安心感が向上:レビューの要約により、旅行者の不安が減り、宿の決定をよりスピーディーに行えます。
Enggist 氏は次のように話しています。「大きな気づきのひとつは、顧客行動の変化のスピード感です。最初の頃は、ユーザーは単に具体的な場所(たとえば『マートルビーチ』)を入力して、基本的には検索エンジンのように使っていましたが、今では、より細かく、会話的な質問が見られるようになりました。『9月に愛犬と一緒に静かなビーチに行きたい』というような感じです」
「オープンモデルは、意図を理解し、現実世界の複雑さに適応する能力が非常に優れています。10年以上機械学習に取り組んできましたが、OpenAI のおかげで、意図を理解することとそれを実現することのギャップを縮めることができました」と、Francis 氏は述べています。
Booking.com の経営陣によると、OpenAI はテクノロジーだけではなく、協力して取り組む姿勢も際立っていると言います。
「OpenAI との協業で象徴となるのは、共に未来を創っていくことです。未解決の問題や初期段階のアイデアを持ち込むと、それを実現可能な形にするのを手伝ってくれます」と、Enggist 氏は語っています。
Francis 氏もこの意見に同意しています。「OpenAI との共同作業では、ただ目の前の作業をこなすだけではなく、『次に何をすべきか』を考えることが重要なのです」
Booking.com は、さらに没入感のある、エージェント主導の体験を創造する機会を見いだしています。Enggist 氏は次のように語っています。「旅の行程全体を通してお客様に寄り添ってサポートするコンシェルジュのようなパートナーを築きたいと考えています。旅行の予約をお手伝いするだけでなく、フライトがキャンセルになった場合は予約を取り直し、到着が遅れた場合は新しいホテルを探し、到着時には近くのレストランを提案するなどのサポートも行います」
「AI は Booking.com の業務の基盤となりつつあり、オープンモデルは、理解とパーソナライズの新たなレベルを切り拓きました。単なる検索にとどまらず、より豊かで、よりつながりのある旅行体験を創造することが重要です」



