Lowe’sはOpenAIモデルのファインチューニングを実施し、eコマースのデータ品質を改善

アメリカを拠点とするLowe’sは、週に約1,600万件の顧客取引を扱う、Fortune 50にも選出されたホームインプルーブメント企業です。最先端の技術を駆使して従業員体験および顧客体験の向上を図ってきた同社は、オムニチャネル小売業者として業界をリードする存在です。同社のデータ・AIチームは、OpenAIのモデルのファインチューニングによって、自社のウェブサイト検索のデータ品質を向上できると考えました。
正確な製品データの重要性
大規模な小売業者にとって、注文された商品と配達された商品との一致は目標であり、顧客が商品を購入する過程で得られる情報が正確であることは重要な課題です。
Lowes.comにおける顧客体験を向上させるために、データ・AIチームは商品説明の正確性の向上を目指してきました。商品説明が不正確な場合、在庫管理や整理が困難となり、オンラインショッピング体験に摩擦が生じます。例えば、「銅製のバスルーム用蛇口」を検索したのに、代わりに多数のクロム製バスルーム用蛇口が表示されたり、「18インチの食洗機」を検索しても、製品カタログのタイトルや説明が正しくないため、24インチの食洗機が表示されたりすることがあります。その結果、Lowes.comで購入を完了する顧客が減少しかねません。
商品に正しいタグを付けることは、オンライン小売業者やAIチームにとって共通の課題です。AIエンジニアらは、ルールベースの正規表現による基本的なトークンマッチングから、高度な自然言語処理(NLP)の手法まで、さまざまな技術を駆使してこれらの課題に対処してきました。その後、フラグが立てられたエラーを人間が検証する過程では、人間によるエラー率が高くなりがちです。また、誤ってフラグ付けされたエラーに対して、人間の介入は問題を解決できず、新たな作業負担を従業員に強いることになります。

プロンプトエンジニアリングを駆使してデータの精度を向上
2023年1月、Lowe'sのエンジニアとAIスペシャリストらはデータ品質の不一致に対処するために、OpenAIのGPT‑3.5モデルの導入を決意。初期段階のテストでは結果の精度にポジティブな影響が見られ、これこそ求めていた解決策だと思われました。
「自社の製品データを基にGPT 3.5をファインチューニングした結果を目にしたとき、チームの興奮が伝わってきました。成功のカギを手にしたと感じました。」とデータ、アナリティクス、コンピュテーショナル・インテリジェンス(DACI)担当のシニアディレクター、Nishant Gupta氏は述べています。
プロンプトエンジニアリングという新たに定義された分野で、Lowe'sはさまざまなプロンプトの組み合わせを試し、プロセスの精度向上を図ることに。数か月の間に、特定の商品カテゴリーで顕著な改善が見られたため、このプロセスをさらに拡大しました。さらに、AIベースの商品分類をLowes.comで本番稼働させたところ、エラーの検証を行う担当者の作業負担がすぐさま軽減されました。

ウェブサイトの検索パフォーマンス最適化を図り、GPT 3.5をファインチューニング
そのソリューションは優れていたものの、精度を向上させる必要があり、また、プロンプトのサイズは急激に増大していました。そこで、チームはOpenAI APIを使用してGPT 3.5のファインチューニングを実施。Lowe’sのデータセットに対する理解の向上を図り、その結果、20%の精度の向上が見られました。製品のタグ付けが完了した現在、Lowe’sはチームメンバーによってフラグ付けされたエラーに基づいて、モデルの新バージョンのファインチューニングを行う予定です。
Lowe’sは、精度を向上させエラーを最小限に抑えるために引き続き改善を続けるほか、エラーのチェック過程における生産性の向上にも取り組んでいます。いくつかのカテゴリーでは、Lowe's のエラー検出率は約60%向上し、検索結果における商品説明の精度が大幅に向上しました。
OpenAIの支援により、Lowe'sはより正確かつ一環した商品情報を実現しただけでなく、顧客体験における摩擦を減少させ、eコマースの成長を加速させています。