当社の体制
OpenAIの体制 —創設当初の非営利組織(Nonprofit)と新たな営利子会社(利益上限付き)とのパートナーシップ— は、OpenAIの使命である「安全で全人類に利益をもたらす汎用人工知能(AGI)の構築」の枠組みとする意図で整備されました。
概要
2015年末、人類の利益のために安全で全人類に利益をもたらす汎用人工知能の構築を目標として、OpenAI Nonprofitは創設されました。それまでは、類似するプロジェクトは国または国家連合組織が、人類への幅広い利益を追求する人類規模の取り組みとして起こされたものでした。
公共セクターに明確な進展が見られず、民間産業(SpaceX、Cruiseなど)による意欲的なプロジェクトが成功を収めていることから、公共の利益に対する強力なコミットメントを制約とする民間プロジェクトを立ち上げることにしたのです。当初は501(C)(3)(米国法における非営利団体)が、利益誘因に妨げられることなく安全で全人類に利益をもたらす汎用人工知能の開発を目指すための最も効果的な形態であると考えました。公開しても安全であり、公共の利益となると思われる場合には、当社の研究とデータを公開することを公約としていました。
このプロジェクトには多くの資本が必要となることが常に懸念されたため、10億ドルを目標とした寄付募集の取り組みが開始されました。しかし、その後の年月においてOpenAI Nonprofitの運営およびディープラーニング、安全性、アライメントに関する初期の探索的作業の資金として集まった寄付金の合計額は、1億3050万ドルほどでした。
中核的研究を前進させるために必要な計算能力と人材にかかる費用は寄付だけでは賄えないことが次第に明らかとなり、当社の使命追求を危うくしました。そのため、Nonprofitの中核の使命、ガバナンス、監視は保つ一方で、使命追求のための資金調達を可能にする体制を考案しました。
- OpenAI Nonprofitは、理事会がOpenAIのすべての活動の統括管理機関であることを含め、そのままの形態で存続させます。
- 新たに営利子会社が設立され、資金調達と世界トップクラスの人材雇用のために株式発行を行いますが、Nonprofitの指示下に留められます。営利関係の取り組みに従事していた従業員は、新しい子会社に異動となりました。
- この営利子会社は、Nonprofitの使命追求に対して法的拘束を受け、研究、開発、商業化などの中核事業に関与することで、使命を実行します。全体を通して、安全性と幅広い利益に関するOpenAIの指導原則がアプローチの中心となります。
- 営利子会社の資本構成は、ただ単に利益の最大化を重視するのではなく、AGIの研究、開発、展開において、安全性・持続可能性と商業性とのバランスをとる形を推奨し、投資家および従業員への金銭的還元に上限を設けるものとなります。
- Nonprofitは、自社事業に加えて、理事会を介して利益創出に関するすべての活動の統制・監視を行います。またNonprofitは、包括的なベーシックインカム研究(新しいウィンドウで開く)への資金援助、経済的影響の研究への支援、「OpenAI Scholars」のような教育中心のプログラムでの実験などの幅広い慈善活動にも継続して取り組んでいきます。長年の間Nonprofitは、Stanford University Artificial Intelligence Index Fund、Black Girls Code、ACLU Foundationなどのテクノロジー、経済的影響および正義を重視する公共慈善団体に対する支援も行ってきました。
このようにして、Nonprofitは当社体制の中心であり続けて、AGI開発の管理を行い、営利子会社はOpenAIの中核的使命の追求という義務の下で、リソース集めを任務とすることになります。上記すべての使命の優位性は、営利子会社の運営契約に組み込まれ、すべての投資家と従業員には以下の条件が適用されます。

当社体制の詳細
一般的に投資家は金銭的還元を求めますが、当社は投資家の動機と当社使命を一致させる道を見つけ出しました。このイノベーション実現の鍵は、以下の重要な経済的規定とガバナンス規定でした。
- 第1に、営利子会社はOpenAI Nonprofitの完全な支配下に置かれます。これは、営利子会社の管理と統制の権限を持つ管理法人(OpenAI GP LLC)の完全な所有と支配をNonprofitが行うことで実現されました。
- 第2に、理事会はNonprofitの理事会であることに変わりはないため、各理事はNonprofitの使命である「幅広い力をもたらす安全なAGI」の推進における自身の信任義務を果たさなければなりません。営利子会社は、利益の創出と分配を行うことを認められていますが、前記の使命が条件とされます。Nonprofitの第一受益者は人類であり、OpenAIの投資家ではありません。
- 第3に、理事会は過半数が独立理事という形態を崩しません。独立理事は、OpenAIの株式を保有せず、OpenAIのCEOであるSam Altmanにおいても、株式を直接的に保有することはありません。Altmanが得る唯一の利益は、OpenAIに常勤雇用される前に小規模の投資を行ったY Combinator社の投資ファンドを介して間接的にもたらされるものです。
- 第4に、投資家と従業員(Microsoft社を含む)に分配される利益には上限を設けます。上限を超えて残った額は、すべて人類の利益のためにNonprofitに返還されます。
- 第5に、AGIの達成の判断は理事会が行います。繰り返しますが、当社の意味するAGIとは、経済的に価値のある仕事の大部分において人間の能力を上回る自律性の高いシステムを指します。そのようなシステムは、IPライセンスおよびMicrosoft社との取引条件(AGI以前のテクノロジーにのみ適用)からは除外されています。

当社は、事業加速の機会を求める際には、当社体制のコアガバナンスと経済的要素の維持に努めます。実のところ、AGIへの道が不明確であることから、当社の体制は順応性のあるものとして設定されました。当社はこれは特長であって、バグではないことを確信しています。
Microsoft
OpenAIは、2019年に利益上限付き体制(および初回の資金調達)について発表してから間もなく、Microsoft社と戦略的パートナーシップを締結しました。その後、Microsoft社の総投資額、当社との商業およびスーパーコンピューティングにおける協力関係の規模と領域が広がり、このパートナーシップは拡大 しました。
Microsoft社とのパートナーシップは数十億ドルの投資が含まれるものではありますが、OpenAIは、OpenAI Nonprofitの統制下にある完全に独立した会社という形態を維持しています。前述のように、AGIはすべての商業協定およびIPライセンス契約からは明示的に切り離されています。
当社がMicrosoft社をコンピューティングと商業のパートナーとして選択した理由が、これらの取り決めに示されています。当初から、Microsoft社は当社の還元上限付きでの株式オファー、およびAGIのテクノロジーとそのガバナンスはNonprofitと全人類の管理化にしておきたいという申し出を受け入れてくれました。また、展開前にシステムの評価を行う合同安全委員会の設立と改善にも協力を得ています。当社の創業の精神を鑑みて、Microsoft社は当社のプロジェクトが公共セクターレベルのリソースを必要とする独自で意欲的なものであることに理解を示し、最終的な結果をすべての人と共有することに対して全く同じ誠意を抱いています。
当社理事会
OpenAI is governed by the board of the OpenAI Nonprofit, currently comprised of Independent Directors Bret Taylor (Chair), Adam D’Angelo, Dr. Sue Desmond-Hellmann, Zico Kolter, Retired U.S. Army General Paul M. Nakasone, Adebayo Ogunlesi, Nicole Seligman, and Larry Summers, as well as our CEO Sam Altman.