Wayfair、OpenAI でカタログ精度とサポート対応のスピードを向上
OpenAI モデルをサプライヤーおよびカタログシステムに組み込むことで、Wayfair は数百万点の商品にわたるデータ精度を高め、ワークフローの自動化を実現しました。

結果
2.5M
修正された商品タグ数
結果
41K
月あたり自動化されたサプライヤーサポートチケット数
結果
1,200
導入済み ChatGPT Enterprise 利用枠
世界最大級の家具・インテリア小売企業である Wayfair は、重要な社内システムに OpenAI のモデルを組み込み、サプライヤーサポートのワークフローと商品カタログの品質を大規模に向上させています。2024年に小規模リリースでの価値検証として始まった取り組みは、現在では本番環境で稼働するシステムへと発展し、手作業の削減、意思決定の迅速化、数百万点の商品にわたるデータ品質の向上を実現しています。
Wayfair は生成 AI を実験や単発のソリューションとしてではなく、中核業務のワークフローに組み込んで活用しています。同社がまず注力したのは、複雑さとスケールの要件が最も高い領域です。具体的には、サプライヤーからの問い合わせの振り分けと対応、そして約3,000万点に及ぶカタログ全体で数万件の商品の属性を一貫して改善することでした。
「最も価値があったのは、共に考えるパートナーとしての関係です。その価値は、単にモデルを使えることにとどまりません。新しいユースケースに一緒に取り組み、迅速に進められる点です。」
Wayfair のカタログチームは、約1,000種類の商品カテゴリにわたる数千万点の商品を管理しています。色、素材、サイズ、特定の機能といった商品属性タグの一貫性と正確性は、検索やレコメンド、マーチャンダイジングにおいて不可欠です。
「データ品質が高まるほど、お客様からの信頼も高まります。これは非常に重要です。購入者が適切な購入判断を行えるようになり、商品情報の誤りによる返品などのコスト増を直接抑えることにつながります」と、Wayfair カタログマーチャンダイジング担当アソシエイトディレクター、Jessica D’Arcy 氏は述べています。
OpenAI 導入前は、タグ付けの改善は主に、サプライヤーや顧客からの指摘に依存していました。手作業ではその量に対応しきれませんでした。初期には、個別のタグごとにカスタム AI モデルを構築していましたが、構築や運用にコストがかかるという課題がありました。Wayfair スタッフ機械学習サイエンティスト、Carolyn Phillips 氏は次のように話します。「当初は、個々のタグごとにカスタムモデルを構築しましたが、技術的には機能していました。しかし、47,000ものタグを扱うとなると、その方法ではスケールに対応しきれません。」

単発のモデルにとどまらないために、Wayfair は単一の OpenAI モデルを基盤とした、タグに依存しないシステムを構築しました。「definition agent」は、ウェブおよび社内の定義を取り込み、各タグに応じた文脈的な意味を生成します。「実際のボトルネックはモデルの性能ではありませんでした」と、Phillips 氏は話します。「各タグが実際に何を意味するのかを定義し、それをコード化するための人的な時間だったのです。」こうした文脈に、Wayfair のデータエコシステム全体から集約された商品データを組み合わせ、商品カテゴリを横断して属性を分類できるフレームワークに取り込んでいます。現在チームは、新たな属性への対応を、わずか1年前と比べて70倍のペースで拡大しています。
このシステムは現在、100万点以上の商品に対して本番環境で稼働しています。また、属性が強化された第一弾の商品については、すでに十分な期間が経過しており、データ品質の向上がカスタマージャーニーにどのような影響を与えるかを測定できるようになっています。「属性の完全性を高めることは、抽象的な話ではありません。その効果は SEO や PLA のパフォーマンス、つまり顧客がどのように商品を見つけるかという点に明確に表れます」と Phillips 氏は話します。A/B テストでは、介入群においてインプレッション数、クリック数、ページランクが大幅に増加し、統計的にも有意な結果が確認されました。
ただし Wayfair は、商品データの修正に関する判断を単純にモデルへ委ねているわけではありません。「私たちの目的は、お客様が購入する商品に完全に自信を持てるよう、信頼を築くことです」と Phillips 氏は話します。同社は、担当者がサンプルを実際に確認してモデルの出力を検証する実地監査プロセスを導入しました。あわせて、サプライヤーと連携し、変更内容の検証も行っています。現在では、データに基づく確信度が高い場合は、自動的に内容が更新され、その変更がサプライヤーに通知されます。一方で、高い基準を満たさない場合や高リスクと判断されたタグについては、変更前にサプライヤーの確認を行います。
Wayfair は、包括的なカタログを支えるため、数万社にのぼるサプライヤーと連携しています。サプライヤーからのサポートリクエスト(チケット)に対応するため、これまで Wayfair の担当者はすべてのチケットを確認し、サプライヤーの意図を手作業で特定したうえで、適切な社内担当者に振り分けていました。このプロセスは時間がかかるうえ、ミスも発生しやすいものでした。「サプライヤーからの依頼は単純ではありません」と、Wayfair サプライヤーサポートおよびオペレーション担当、Graham Ganssle 氏は話します。「問題の種類は数百に及び、1人の担当者がそのすべてを現実的に把握することはできません。」
Wayfair は、Wilma という製品にエージェント型の機能を追加し、これらのワークフローを AI で強化しました。本番環境で最初に導入された機能の一つが、OpenAI モデルによるチケットのトリアージです。システムは受信したリクエストを読み取り、不足している背景情報を補完し、適切なチームへチケットを振り分けます。Wilma は迅速に導入できるよう設計されており、すでに OpenAI API と統合された基盤上で構築されていたため、プロトタイプから本番稼働まで約1か月で移行しました。「Wilma によって担当者の生産性が高まります」と、Ganssle 氏。「チケットを読み取り、意図を特定し、自社データベースの情報で不足している内容を補完したうえで、必要に応じてサプライヤーへ再度問い合わせ、適切な対応先へ振り分けます。」
チケットの振り分けにとどまらず、Wayfair は特定の対応チーム向けに12種類のエージェント型 AI フローを導入しています。たとえば、交換部品オペレーションチーム向けのコパイロットは、複雑なケース履歴を読み取り、次の対応や返信案を提示し、その最終的な確認は担当者が行います。これらのアシスタントは過去のデータで学習しており、文脈に応じて適切な対応を判断できるようになります。「このモデルは、やり取り全体の文脈を踏まえて判断できます。これは一人の担当者には難しいことです」と Ganssle 氏は話します。「こうした広い視点が、顧客とサプライヤー双方の満足度向上につながります。」
Wayfair は、AI の提案が担当者の最終判断とどの程度一致するかを測定しており、この指標を「アラインメント率」と呼んでいます。各チームでは、アラインメント率が一定の基準に安定して達すると、ワークフローは支援型(「コパイロット」)から半自律型(「オートパイロット」)へ移行します。この段階的なアプローチにより、信頼を高めつつ、展開時の品質も確保しています。
「最初に問い合わせを適切に振り分けないと、その後のすべての工程に遅れが生じます。そのためトリアージが基本となります。」
Wayfair は、OpenAI モデルを社内システムに統合して以降、明確な改善が確認されたと報告しています。
カタログ面では、表示頻度や購入頻度の高い100万点超の商品にわたり、250万件の商品タグを修正しました。これにより、顧客が目にする誤ったタグや欠落したタグの削減につながっています。今後6か月で、この効果をさらに4倍に拡大する見込みです。
サプライヤーサポートでは、トリアージ、コパイロット、オートパイロットの各システムにより、月あたり41,000件のチケットを自動化し、処理能力(スループット)を向上させています(一部のワークフローでは最大70%)。また、担当者の業務から定型的な手作業を削減することで、対応時間の短縮にもつながっています。その結果、複数のワークフローにおける解決までの時間が大幅に短縮され、サプライヤー満足度を高めるとともに、チケットの再発も抑えています。
モデルによって、担当者一人では見きれないチケットやサプライヤーの意図まで把握できるようになり、満足度向上に寄与しています。
運用面では、チームから次のような成果が報告されています。
- 複雑なサプライヤーチケットの振り分けと解決の迅速化
- サプライヤー満足度の向上
- 手作業によるデータ入力や分類作業の削減
- 数百のトピックにまたがる専門知識がなくても、幅広い課題に対応可能
- 公開前のカタログ属性の信頼性向上
Wayfair はまた、約12,000人の従業員に対して1,200を超える ChatGPT Enterprise の利用枠を導入し、その都度発生する業務や社内での問題解決、生成モデルの活用・検証を支援しています。
Wayfair は、事業の発展に向けて機械学習への投資や、AI プラットフォームおよび LLM プロバイダーとの連携を長年にわたり進めてきました。現在は、フロンティアモデル、とりわけマルチモーダルシステムの進展により、チームが取り組める領域がさらに広がっています。これは、見た目やデザイン性が重視され、評価が主観に左右されやすい家具・インテリア領域において特に重要です。
「今は取り組める課題の幅が大きく広がっており、とても期待しています」と Carolyn Phillips 氏は述べています。「従来のアルゴリズムでは、厳密に定義されたデータセットが必要でした。しかしこれらのモデルにより、曖昧さや文脈を踏まえた対応を、これまで難しかった規模で実現できるようになりました。」
ChatGPT Enterprise に対する従業員の需要は、今後も高い状態が続いています。Wayfair のチームは、これを業務を迅速に進めるための実用的なツールと捉えています。
顧客の期待も急速に変化しています。日常生活で AI を使うことに慣れる買い物客が増えており、オンラインで商品を閲覧・比較・購入する際にも、同様の機能が求められるようになっています。
「自宅で商品を探す際、顧客は自分の求めているものを的確に言葉にできないことがよくあります」と、Fiona Tan 氏。「自然言語やマルチモーダルシステムが、そのギャップを埋めるのに役立ちます。」
Wayfair のリーダーにとっての目標は引き続き、人の専門性を生かしながら、社内の対応力を拡大していくことです。「AI が購買体験の一部となる世界を見据え、当社サイト、サポート、対話型インターフェースなど、さまざまな接点で活用を進めています」と、Fiona Tan 氏は締めくくりました。

