AGI が全人類に利益をもたらすためには、民主的に統治されなければならないと私たちは考えています。これを実現するには、高性能な AI システムの能力、リスク、安全対策について、十分な情報に基づく社会的な議論が不可欠です。世界中の人々がフロンティア AI の発展のあり方に実質的に意見を反映できるよう、その将来の見通しを理解する必要があります。
具体的なリスク、インシデント、安全対策について透明性を確保することは必要ですが、それだけでは十分ではありません。私たちは、最も高性能なシステムがフロンティアラボ内でどのように進化し、研究の進展をどのように牽引しているのかについて、一般の人々も理解する必要があると考えています。
私たちは、人間の監督下でディープラーニングとアラインメントの研究を進め、改善を繰り返せる自動化された AI 研究者を、安全に構築することを目指しています。私たちの測定によれば、昨年秋に発表した(新しいウィンドウで開く)「今年9月までに自動化されたリサーチインターンを実現する」という目標を、現時点で達成しました。ここで言う「リサーチインターン」とは、人間の指示の下で、明確に定義された研究タスクを遂行できるシステムを指します。これには、熟練した研究者なら数日を要するようなタスクも含まれます。私たちは、2028年3月までに自動化された AI 研究者を実現するという目標に向けて、大きな進展を遂げています。
今年に入ってから、OpenAI の研究者の日々の業務は大きく変化しました。研究者は1日を通して、多くの場合は複数のセッションを並行して、コーディングエージェントを使用しています。総利用量は急速に増加しており、その伸びは OpenAI の他のチームを上回っています。研究者はより迅速にコードを作成し、より多くの実験を実行しています。研究者によるエージェントの活用方法も変化しています。エージェントはますます複雑なタスクを処理し、成功する頻度も高まっています。AI 研究は、ボトルネックになり得る要因が数多くある複雑なプロセスです。そのため、研究全体の進展が、これらの個別指標と同じペースで加速するとは考えにくいでしょう。ただし全体として、これらの結果は、エージェント型ツールが研究の進展を実質的に加速しているという、社内の多くの人が抱く全般的な実感と一致しています。研究の優先順位を定めるのも、どのアイデアや成果を追求するかを判断するのも、システムを拡大するか、一時停止するか、デプロイするかを決定するのも、依然として人間です。
責任ある形で進めれば、自動化された AI 研究は、人々の福祉を直接向上させ、OpenAI のミッションを推進するモデルを生み出すと私たちは考えています。これにより、高度な知能を利用するコストを引き下げ、世界中の人々がその恩恵を受けられるようになります。私たちがこの取り組みを進めている理由の一つは、自動化された研究が、アラインメント問題の解決と、能力がますます高まる AI に対する防御策の構築に役立つ可能性があるからです。自動化された AI 研究者は、安全性やアラインメントを研究する役割も担えます。より高性能でアラインメントが取れたシステムは、重要インフラの保護、危険な AI エージェントへの防御、新たな保護策の開発に役立つ可能性があります。
こうした利点は、研究の自動化に役立つ能力を開発する理由になります。ただし、だからといって、急速な RSI の実現を必ずしも目指すべきだということにはなりません。この取り組みを進めるかどうか、またどのように進めるかは、人間による管理を維持できるかどうかと、利益とリスクについて十分な情報に基づいてなされる民主的な選択によって決めなければなりません。
アラインメントが確保された完全な RSI に、安全に到達する方法はまだ分かっていません。私たちは、能力の向上に合わせて、アラインメントと安全対策を拡大・強化することに取り組んでいます。しかし、アラインメントと安全性の向上が、能力の向上と同じペースで進むとは限りません。また、システムの性能が高まるほど、監視が難しくなる可能性があります。この取り組みの中心にあるのは、アラインメントと安全性に関する慎重な研究です。その第一歩は、現在のエージェント型コーディングシステムで見られる安全上の問題を測定し、軽減することです。取り組みの継続が許容できない安全上のリスクをもたらすと判断した場合は、適切に対応します。十分な安全対策を講じられないシステムについては、開発やデプロイのペースを落とすことや、停止することも含まれます。
最近の Hugging Face インシデントを受けて、当社はこのコミットメントを実行に移しました。デプロイを予定している最新モデルの強化学習(RL)トレーニングを一時停止し、その間に、研究環境のセキュリティをさらに強化し、レッドチーム演習を実施するとともに、監視システムの対象範囲を拡大しました。これによりすべての研究が停止したわけではありません。一部のワークロードはより強力な管理体制の下で再開された一方、その他は一時停止されたままでした。安全性とアラインメントの基準を引き上げ、安全性に関する取り組みをモデルのライフサイクルにより深く組み込んでいます。また、トレーニングの全過程を通じて、アラインメントの取れた挙動を示す、より強い証拠を求めています。
本日は、ここ数か月間、エージェント型システムが RSI の実現に向けた私たちの取り組みにどのように貢献してきたかを、詳しく紹介します。エージェント型システムは新しく、急速に変化しており、私たちの測定の取り組みもまだ予備的な段階にあります。これらの初期結果と測定に用いた手法を共有することで、一般の人々に情報を提供し、情報公開を当然とする慣行を広め、この分野で共通の測定基準を確立する一助となることを目指しています。
最終的には、当社のフロンティア政策のブループリントで記したように、当社および他社には、RSI に向けた進捗を継続的に把握し、公表することが義務付けられるべきだと考えています。そのような要件がなくても、当社は引き続き RSI の進捗について透明性をもって情報を開示していく予定です。測定手法の改善と理解の深まりに応じて、情報公開の方法も改善していきます。その際は、セキュリティの確保と専有情報の保護の必要性とのバランスを取ります。
今年の初めの時点では、OpenAI でエージェント利用量が中央値に当たる研究者によるコーディングエージェントの利用は、まだ少量にとどまっていました。8月中旬までには、利用量が中央値に当たる研究者もエージェントを日々の業務に組み込み、API 価格換算で1日あたり600ドルを超える額に相当する推論を実行するようになっていました。私たちの研究組織では、利用量が90パーセンタイルに当たるユーザーは現在、1日あたり7,000ドル相当を超えるトークンを使用しています。
2026年6月より前は、研究組織全体におけるエージェントの総稼働時間は、まだ人間の総労働時間を下回っていました。その後、状況は変わりました。標準的な1日8時間の稼働で換算すると、8月中旬時点では、研究組織全体で、人間の労働1日分に対してエージェント3.1日分の稼働を活用しています。
別の見方として、4つ以上のエージェントを同時に実行するなど、多数の処理を並行して進めるワークフローを利用している研究者がどれだけいるかに注目することもできます。以下に示すように、この数値は増加しています。これらの数値には、ユーザーが直接起動したエージェントと、そこから派生して作成されたサブエージェントの両方について、1日ごとのピーク値が含まれます。
AI 研究の多くは、モデルの知能や性能を高める新たな改善を、当社の中核モデルのいずれかに組み込むための、多大な労力を要するプロセスと捉えることができます。このプロセスには多くのステップがあり、それらがすべて連携してうまく進むことで、モデルの能力が向上します。研究者は、新たな改善策を設計し、モデルの性能を判断するための評価を作成する必要があります。また、改善策を大規模にテストするためのインフラを構築し、トレーニング中のバグや、安全でない挙動、意図と整合しない挙動を検出しなければなりません。さらに、効果が確認されたアイデアを、中核となるトレーニングに組み込む必要があります。研究プロセスのどの部分で失敗しても、ループ全体が制約を受ける可能性があります。
コードを書くことと実験を行うことは、研究者が業務の一環として行う主要な活動の二つであり、こうしたプロセスが加速していることを示す証拠が見られます。
これらのデータポイントは比較的測定しやすい一方で、解釈が難しい場合があります。自動化が進むにつれて、最も自動化しにくいタスクが研究者の労力に占める割合は大きくなり、将来の進歩にとって重要なボトルネックとなるでしょう。計算資源も進歩を左右する制約要因の一つであり、他のボトルネックが軽減されるにつれて、時間とともにその重要性が増す可能性があります。
2026年に入ってから、アクティブな実験者1人あたりの実験数は増加しており、2026年8月には、2025年1月の計測開始以来、最高を記録しました。この実験数の増加は Codex の導入拡大と相関しています。ただし、2025年以降、当社が利用できる計算資源も大幅に増えている点には留意が必要です。
定性的な印象と内部データの双方から、研究者がコーディングエージェントに任せるタスクの構成が変化していることが分かります。より高レベルのタスクや、完了までにより長い時間を要するタスクを任せることが、次第に一般的になっています。
この傾向をより明確に把握するため、Epoch AI が開発した最近公開された分類体系(新しいウィンドウで開く)を用いて、研究組織における最近の利用状況を分析しました。この分類体系は、AI の研究開発ライフサイクルを構成するさまざまな作業を分類するものです。この分類体系は、さまざまな業務の分類に長年使われてきた O*NET システムに着想を得て、フロンティア AI の研究開発に特化して設計されたものです。研究開発のプロセスを次の6つの主要フェーズに分けています。
意思決定:何に取り組むか、何を続けるか、どこにリソースを配分するか
設計:研究のアイデアと技術仕様
ビルド:コードとデータセット
実行:トレーニング/評価の実行、ハードウェア、サービング
分析:実験、モデル、デプロイ、外部の取り組み
共有:研究結果、フィードバック、状況、決定事項
以下では、この分類体系に基づいてコーディングエージェントのトークンを分類します。
2026年1月から8月にかけて、すべてのカテゴリで研究活動が増加していることが分かります。1月に最も大きな割合を占めたカテゴリは、研究用コードとインフラ用コードでした。このカテゴリも拡大していますが、他のカテゴリ、特に技術サポートと実行の監視でも顕著な増加が見られます。高レベルの計画立案に使われる出力トークンは、依然としてエージェントの出力トークン全体のごくわずかな割合にとどまっています。
同僚からの個別の報告によると、コーディングエージェントは社内の研究インフラのトラブルシューティングに優れており、研究の進展を妨げる重要なボトルネックの一つへの対処に役立っています。以前、研究者が実験中に遭遇する問題の解決を支援するために相談時間を設けていた複数のチームから、2026年に参加者が減少しているとの報告がありました。そのうちの1チームは相談時間の設定を完全に取りやめ、他のシステム改善に注力するようになりました。
以下のグラフは、研究者が他のチームに技術サポートを求める主要な社内チャネルの一つを対象にしています。そのチャネルへの1日あたりの新規投稿数(返信を除く)を示しています。私たちが把握している限り、このチャネルでの活動の減少を相殺するほど、人間が対応する別の技術サポートチャネルへの問い合わせが増えたわけではありません。投稿数の減少は、こうした全体的な変化と整合しています。
コーディングエージェントが、研究者から依頼されたタスクをうまく遂行できているかどうかを調査することもできます。エージェント型分類器を用いて、実際の成否を確認できるタスクを分析しました。難易度の指標には、人間がタスクを完了するまでの推定所要時間を用いています。その結果、1月から7月にかけて、複数の難易度区分で成功率がおおむね向上していることが分かりました。ただし、エージェントがタスクを成功させるには、依然として人間が大きく方向付ける必要があります。特に、タスクが複雑になるほど、その必要性は高まります。過去6か月間では、人間なら4〜8時間かかると推定されるタスクのうち、エージェントが成功したものの半数以上で、人間が1回以上介入していました。
研究者が依頼したタスクにおけるエージェントの成功率は、次第に上昇しています。グラフでは、結果を判定できなかったものと、セッション数が50件未満または重複を除いたユーザー数が50人未満のデータポイントを除外しています。
1月〜7月のタスク成功率と介入率(時間軸別)結果が「不明」に分類されたタスクを除外しています。
安全で有益な AGI の実現に向けて、より高性能なシステムの開発を進められるかどうかは、その取り組みに必要な安全対策にも左右されます。リスクについての理解が深まるにつれて、どのような安全対策が必要かについての当社の評価は変わる可能性があります。
これまでにご説明したとおり、当社は最近、監視、アラインメント、セキュリティに関する基準を更新しました。ここでは、最近の制限が研究活動の一側面にどのような影響を及ぼしたかを示します。
*ここに示されている7月20日から8月6日までの Astra の計算リソースの大部分は、安全性およびセキュリティ改善策の実装をテストするためのものでした。
7月20日、エージェントが当社の研究インフラを侵害していたことが判明したため、当社はトレーニングに使用していたコンテナサービスを一時的に停止し、その後、大幅な追加制限を設けたうえで復旧しました。
これにより、各チームがセキュリティの強化された研究環境で作業できるようワークフローを再構成している間、RL トレーニングに投入される計算リソースは急激に減少しました。上のグラフには、デプロイ予定の最新モデルに対する強化学習を2週間一時停止した期間も含まれています。7月20日から8月6日までの Astra クラスの RL 実験では、安全性およびセキュリティ改善策の実装をテストするための実行が、GPU 割り当て量の過半を占めています。
8月7日、Astra が当社の Preparedness Framework (新しいウィンドウで開く)の基準で重大なサイバー能力を持つ可能性があることを示す予備的な証拠を受けて、モデル固有の追加のセキュリティ制限が導入され、Astra モデルはより高いセキュリティ水準の研究環境で実行することが求められました。翌週、Astra クラスへの GPU 割り当てはさらに59.2%減少しましたが、他のモデルクラスへの割り当ては17.2%増加しました。この増加は Astra クラスの減少分の約85%を相殺し、分析対象の RL ワークロードにおける総割り当てはおおむね変わりませんでした。この傾向は、Astra に関わる作業が制限されていた間に、一部のトレーニングや実験が Astra 以外のモデルに振り替えられたことと整合しています。また、新たな制約の対象となるワークロードに使えなくなった計算リソースを、研究者が別の用途に活用していたという個別の報告とも一致しています。
このデータは、トレーニングと安全性に関する継続的な議論に有用な示唆を与えるものです。すなわち、新たな管理措置が導入されても、計算資源は引き続き価値があり柔軟に利用できるため、研究活動全体の中で自然と別の用途へ振り向けられていくということです。長期的には、AI の進歩のペースをめぐる議論で、新たに導入された管理措置や提案段階の管理措置の対象となる計算資源を、どう活用するのが最も有効かという問題も扱うべきです。
アラインメントが確保された RSI の実現に向けて前進し、その進捗を把握することは、私たちのミッションにとって重要です。私たちは今後も手法を改善し、新たに分かったことを報告していきます。また、フロンティアシステムについて十分な情報に基づく社会的な議論を進め、実質的な民主的ガバナンスの実現に向けて取り組んでいきます。
エージェントを活用した AI 研究は始まったばかりで、その測定方法についても、私たちは模索している段階です。研究チームが作成するコードの量など、比較的容易にデータを集められる指標もあります。ただし、研究の進展との関係が明確でないため、解釈は困難です。研究者から依頼されたタスクをエージェントが成功させる割合など、研究の進展をより直接的に捉える指標は、より役立つ可能性があります。ただし、こうした指標を設計し、妥当性を検証するには複雑な作業が必要です。研究者が利用するツールやシステムも急速に進化しており、測定をさらに難しくしています。研究の加速について理解を深めることは、OpenAI 全体で力を入れている重要な取り組みです。
特に断りのない限り、これらの分析では以下の定義と条件を用いています。
ここでの「研究者」は、当社の研究組織に所属するすべてのメンバーを広く指します。研究インフラの構築、研究プロジェクトの管理、その他の形で組織の活動を支えるメンバーも含まれます。
コーディングエージェントの利用指標は、利用状況の大部分を捉えています。ただし、研究者が利用するツールやシステムが急速に進化しているため、すべてを網羅しているわけではありません。


