Oscar
Oscar、医療保険にAIを導入し、コスト削減と患者ケアの向上を実現。

医療業界は複雑なことで有名です。医療テクノロジーを専門とする企業であるOscar Healthは、患者ケアのあらゆる段階で患者に医療サービスを提供するため、テクノロジーとデータを活用できると考えています。「現実の雑然とした状況を明確なデジタル化されたプランに変換できるモデルとして当社が最初に考えたのは言語モデルでした」とOscarの共同創業者兼最高技術責任者Mario Schlosser氏は振り返ります。
OscarにとってOpenAIとの提携は迷いのない決断でした。Oscarのシニア・プロダクト・マネージャー兼AI研究開発部門の責任者Nikhita Luthra氏は次のように話します。「当社は、医療に特化したユースケースに関する独自のデータセットを使用して定期的に主要モデルすべてを基準に従って評価しています。OpenAIのモデルは常に最高のパフォーマンスを発揮しています」
法律や規制遵守の負担が軽減されることも大きな要因でした。OscarはOpenAIとBusiness Associate Agreement(ビジネス・アソシエイト契約:BAA)(新しいウィンドウで開く)を締結した初の保険会社でした。これにより、Oscarは医療保険の携行性 と責任に関する法律(HIPAA)を遵守しつつ、速やかにすべてを立ち上げることができました。「OpenAIは、データが法律や規制を遵守した責任ある方法で使用されることを徹底する非常に優れたパートナーです」とLuthra氏は言います。

記録と保険金請求処理を自動化し、生産性を2倍に向上
Oscarは医療費を引き上げている煩わしい手作業のプロセスをスピードアップし、自動化するためにAIを使用しています。同社の成功例となったユースケースをご紹介します。
臨床記録の作成:人が患者と医療従事者間の1回の会話を文書に記録する場合、20分以上の時間がかかることがあります。OpenAIのAPIを使用することで、Oscarは医療ケアに関する会話の記録とラボの検査結果の確認にかかる時間を約40%削減することに成功しており、これは全社規模で数え切れないほどの時間の節約につながっています。また時間ほど明確ではないものの、看護士と医師がより重要な業務に集中できるようになったため、燃え尽き症候群の緩和にもつながっています。ただし、これは始まりにすぎません。研究開発部門では、GPT‑4により生産性が最大90%向上したケースが認められています。
保険金請求アシスタントの構築:契約に関わる不確定要素が何百万件もあるため、保険金請求の内容を理解することは、信じられないほど複雑な作業です。医師が保険金請求について疑問を持つ場合、Oscarの従業員は請求処理手続きの過程で行われたすべての詳細なログを確認する必要があります。OscarはOpenAIのAPIを使用して、請求の追跡を効率的にナビゲートし、患者の保険金請求に関する疑問に回答するプロセスを自動化するアシスタントを構築しました。
請求アシスタントにより、保険金請求担当部門がエスカレーションを解決するために費やしていた時間が半分になりました。さらに請求アシスタントは、人間の担当者と同等またはそれ以上の精度で処理を行うことができます。Oscarは、月に最低4,000件、すなわち年末までに48,000件のチケットの調査を自動化することを予定しています。

診療録のデータにAIがもたらす影響
診療録は、患者の重要な情報が含まれた、医療のエコシステム全体で使用される記録です。にも関わらず、日常的に使用する言語で驚くほど乱雑に書かれています。かなり複雑で深刻な症状の患者の診療録は、500ページにも及ぶことがあります。診療録で関連のある情報を見つけるのは干し草の中から1本の針を見つけ出すほど困難なことです。OpenAIと提携することでOscarは、それまでは不可能だった診療録を活用した非常に有用なユースケースを実現しています。
- 保険金請求の審査にかかる時間を短縮するため、患者に関する情報の中から関連のある情報を医師が見つけられるよう支援
- 患者との面談をさらに効率的かつパーソナライズされたものにするため、医療従事者が面談に備えられるよう以前の診療録を要約
- 「糖尿病患者のうち、持続的な血糖値モニタリングに最適なのはどの患者か?」といった質問に回答するため、大量の診療録から情報を抽出・分析
公平であることも重要でした。Luthra氏は次のように説明します。「システムには、非常に深刻で複雑な症状の患者の診療録が、問い合わせや分析、要約に最も手間がかかる一番長い診療録であるという偏りがありました。」
「最も深刻な症状の患者が他の患者と同じように最善のケアにアクセスできるよう徹底する手段が得られたからこそ、私はAIに非常に大きな期待を抱いています」
医療保険業界をリードするAI導入企業を築く
OscarはただAIを導入しているのではなく、AIに注力しています。同社は、それぞれの事業部門のユースケースにAIを応用するプロセスを通して製品、データサイエンス、オペレーションといった他の事業部門を導くことを使命とする集約化されたAIポッドを設定しています。Oscarは、AIをAIのために使用するのではなく、事業の問題をあらかじめ完全に把握することが成功の鍵だと考えています。「非常に複雑な問題を簡単に処理できる作業に細分化できる場合、大きな成功につながる応用方法が見つかるケースをこれまで目の当たりにしてきました」とLuthra氏は説明します。問題を細分化することを重視する姿勢は同社の人材に関する考え方の指針となっています。Oscarは、出版物の引用や学歴よりも、気概、謙虚さ、好奇心を重視しています。「問題を細分化できる人は、現実世界で人間がいかに問題を細分化するかについて非常に大きな好奇心を持つ人です。当社のポッドの6人中5人が女性で、全員が20代~30代です。これは、“AI開発の新境地を開拓する人”についての固定観念というものがひとつもないことを示しています。」さらにOscarは自主規制し、医療業界においてAIが責任を持って倫理的に使用されるよう徹底するため主体的に基準を定めています。同社はアメリカ政府と提携し、37の大手医療支払者(healthcare payer)および医療機関(healthcare provider)で構成される連合体を先導し、AIの使用に関する原則(新しいウィンドウで開く)を共同策定し、その原則を忠実に守っています。
「何より重要なのは、医療業界の規制当局は、AIの成功を願っており、AIについて驚くほど大きな期待を持っている点です。政府への透明性のある情報の流れを維持し、どのようなモデルであればそれを実現できるのかというビジョンを描くことは、医療に関わる立場にあり、業界をリードする立場にもある私たちの責任です」
AIのフライホイールを創造する
Oscarは、自社のブログとSNSで生成AIに関する見解を堂々とシェアしています。Schlosser氏は次のように話します。「医療業界では誰もが同じ問題に取り組んでいます。当社が誰よりも先に問題を解決したら、他の方々に伝えるべきです。他の方々も自分たちが問題を解決すれば、当社に教えてくれるでしょう。それこそフライホイールを回転させるすばらしい方法なのです」Oscarは最初から、AIには機械的な作業を自動化するための単なるツールである以上の価値があると考えていました。同社はAIを医療業界で切望されている改革の扉を開く鍵と考えています。Schlosser氏は次のように補足します。「事務作業のユースケースの簡素化にだらだらと時間をかけて取り組みたいわけではないのです。私たちは医師との臨床上の問題の解決を支援するためにこれらのモデルを活用することを目指すべきです。3~5年以内に当社は、診療費と入院費を10倍引き下げる必要があります。それを実現する唯一の方法は、モデルを中心に置き、ただ記録作業をさせるだけでなく、保険加入者と医療機関のやりとりにモデルを組み込むことです」


