
成果
90%
ChatGPT Enterprise を導入したユースケースで効果を確認
成果
100%
週次アクティブユーザー率
成果
87%
作業時間短縮自動化率
成果
10x
処理件数拡張
大日本印刷株式会社(DNP)は1876年創業の約3.7万人の社員を擁する世界を代表する総合印刷会社です。スマートコミュニケーション、ライフ&ヘルスケア、エレクトロニクスの3部門を柱に、「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントのもと、人と社会をつなぎ、持続可能な社会と心豊かな暮らしの実現に向けた変革を進めています。
創業以来、常に最先端の技術の研究と導入を行ってきた DNP は、2023年4月には経営判断として生成 AI 活用を決定し、翌月には安全に業務利用できる環境を全社に整備しました。2025年2月には ChatGPT Enterprise の導入を開始し、わずか3ヶ月で以下の定量的な成果を実現しました。
- ChatGPT Enterprise を導入した90%のユースケースで効果を確認
- 週次アクティブユーザー率100%
- 作業時間短縮自動化率87%
- ナレッジ再利用率70%(カスタムGPT)
- 処理件数拡張10倍
最新モデルを活用するために ChatGPT Enterprise を採用
DNP は、グループ全体の生産性向上・既存事業の競争力強化・新規事業の創出を加速するためには、生成 AI の最新モデルを活用することが鍵となると判断しました。そこで、2025年2月に、効果が高いと見込む10部門以上を選抜し、ChatGPT Enterprise の導入を開始しました。導入にあたり、「週次で1人100回以上の利用」「作業短縮自動化率50%以上」という全社目標を設定し、部門別・ユースケース別に継続的なフォローで活用を促進しました。
「利用状況を可視化することによって、選抜部門で試行錯誤しながら利用を伸ばしていきました」
その結果、カスタム GPT やユースケースの共有を通じて個人の改善がチームの業務改革へと波及し、DNP では様々な核となるユースケースを生みだしてきました。

特許調査業務を95%短縮し、競争力を強化
ChatGPT Enterprise を選抜導入した部門の中で、最も大きな効果を見せた業務のひとつが、ICT 技術系の研究開発部門における特許関連の業務です。AB センター P&I イノベーション研究開発ユニット長の石田洋平氏のチームは、特許調査業務と出願戦略を自動化・高度化し、以前は手動で行っていた作業の効率化を実現しました。
石田氏のチームは、ChatGPT Enterprise を活用し、次のようなワークフローを構築しました。
- 特許調査業務の自動化:類似特許の検索・要約・分類を自動化し、調査時間を95%短縮。調査件数は10倍に拡大
- 出願案の差別化ポイント抽出:自社技術の特長と他社特許との差異を論理的に整理し、却下リスク低減や補正回数削減に寄与
- 他社動向分析レポートの下書き生成:草案を自動生成し、作業時間を80%短縮
DNP の製品・サービスの独自性と先進性を支える知財基盤を強化し、顧客への安心と競争優位につなげていきます。
「今までは、特許出願自体が属人的な作業となっていて、担当者・部門毎に判断基準がバラバラになっていたのですが、ChatGPT Enterprise によって客観的に判断できるようになり、出願量と品質向上の両方の側面で効果をもたらしています」
Python の学習コスト「ゼロ」で開発作業を加速
DNP の生産技術に関する研究開発を推進する研究部門では、既存の製品やサービスの価値を高めるための QCD 革新、新しい製品やサービスの開発を進めています。とくに分析評価技術を要する領域において、材料評価に必要な実験装置の導入から測定や解析などの業務で、ChatGPT Enterprise を用いることで従来要した時間を大幅に短縮しました。
主な成果は次のとおりです。
- 判断支援と構造整理:英語の特許・仕様や装置原理の情報構造化という数ヶ月必要な解析フローを3日で構築
- 解析支援とコード生成:Python の未経験者が、ChatGPT Enterprise と対話しながらコードを作成
特に Python の未経験者が学習コストゼロで、コードを作成することが出来、データを解析したというユースケースは社内でも大きな成果をもたらしました。従来は、1年以上の時間が必要だった開発作業を数日で実装し、さらに研究者の知見・知識を組み合わせることで、新たな気付きも見出され、部門全体に大きな効果を与えています。
手作業から AI へ、人間の役割も変化
DNP は、IT 基盤の監査対応・クラウドセキュリティ適用・レビュー業務など、以前は手作業で行っていたが故に結果にばらつきが生じやすかった作業においても業務内容を刷新しています。情報イノベーション事業部 ICTセンター システム基盤開発本部長 小林政宏氏は、「情報源から適切な文章を収集する能力と文章生成の質の高さ」を ChatGPT Enterprise の利点として挙げています。この能力をフル活用し、以下のユースケースで大きな効果を確認しています。
- 外部セキュリティ監査:前年の監査項目との差分確認を30分から5分に、暗号スイート選定は3時間から1時間に短縮
- クラウドセキュリティ適用:CIS Benchmarks の非準拠項目の初動調査では約100件を従来の2人日から約10分で完了
- レビュー業務の支援:設計方針・過去記録を参照し、要件レビューを1時間から30分に短縮
「社員は資料突き合わせ中心の作業から、意思決定やリスク判断に集中できるようになりました」
一方で、すべてにおいて AI に頼りきりになるのではなく、「根拠確認や最終レビューは引き続き人間が担っていく必要がある」とも小林氏は説明します。
人間の知識を AI へ継承し労働力不足を解消
DNP では AI を活用した「知識の継承」に取り組んでいます。
例えば製造業全体の課題として、特定の情報や技術を経験年数の長い熟練者しか持っておらず、過去の品質記録が活用されていないことがあります。
AB センター AI 事業開発ユニット 技術開発部長の大澤伊作氏が主導するプロジェクトでは、「非構造化情報や紙のデータを AI に取り込める形に構造化し、その情報をAIに学習させることで知識継承を実現し、生成 AIをデジタル労働力として活用していく」ことを実現します。
DNP は、未来を見据えてデータと AI による長期的な生産性と品質の向上、そして業務プロセスの完全自動化や過去の知識を活用しながら新しい組合せやアイデアの創出を目指しています。
主な成果
- ChatGPT Enterprise を導入した90%のユースケースで効果を確認
- 週次アクティブユーザー率100%
- 特許調査業務を95%短縮
- 作業時間短縮自動化率87%
- 処理件数拡張10倍
今後の展開
ChatGPT Enterprise の活用が進むなかで、DNP はさらなる対象部門の拡大と、各業務に最適化された AI エージェントの内製・実装を加速しています。目的はコスト削減や生産性向上にとどまりません。新規事業の創出や売上拡大といった攻めの領域へと踏み込み、価値創造のスピードを上げていくことです。大竹氏は「AI エージェントが様々な場面に溶け込み、誰もが意識せずとも AI の恩恵を受けている状態を目指す」と語ります。
また、大竹氏は近未来像を「人間と AI の協働から、AI が前提となる社会へ」と表現します。AI エージェントが業務の一角を担いはじめ、「人が介在しなくても AI 同士で社会が動く部分が出てくる」という見立てです。この流れは、ロボティクスの進化により物理 AI が具体化し、「物理空間で稼働する AI の世界」が実現することで一層加速していくでしょう。その未来に向けて、最も重要になるのが「知識の継承」です。大竹氏は「人間向け情報を AI 向け情報に変換し、知識を継承することが重要です。労働人口減少を見据えた飛躍的な生産性の向上を目指したい」と強調します。現場のノウハウや品質記録をデータとして体系化し、AI エージェントや将来の物理 AI に学習・実装することで、技能の属人化を解消し、持続的な競争力へと転換していく狙いです。
DNP はブランドステートメントである「未来のあたりまえをつくる。」のもと、事業の発展で培った印刷技術と情報技術の強みを拡張し、AI ネイティブな企業へと変革していくことで、社会に新しい「あたりまえ」を生み出していきます。


