
「Executive Function」シリーズでは、AI を通じて変革を推進するリーダーたちの視点をご紹介しています。
CRED は、インドを拠点とする会員制クラブで、クレジットカードの請求を期限内に支払う信用力の高い個人に対し、限定オファーやプレミアム体験へのアクセスを提供しています。2018 年の設立以来、CRED は、インドの富裕層向けにシームレスで安全性が高く、美しくデザインされたデジタルプロダクトを提供するブランドとして成長してきました。現在では、月間 1,500 万人以上のメンバーが CRED を利用しています。事業の拡大に伴い、この品質を維持するためには、プロダクト開発やサービス、社内の連携の進め方にも新たな工夫が求められるようになりました。
同社が OpenAI と協力しながら、どのようにして高品質なコンシェルジュ体験を大規模に実現しているのか、CRED の Swamy Seetharaman 氏にお話を伺いました。
CRED はこれまでも、インドでもっとも審美眼の高いユーザー層にサービスを提供してきました。AI ファーストの組織へと舵を切ったきっかけは何だったのでしょうか?
当社では当初から、信頼性・透明性・セキュリティ・確実性・そして卓越したデザインを求める、インドでもっとも裕福な世帯を対象にプロダクトを構築してきました。これらの原則は、創業当初から CRED の指針となっています。
しかし、製品数・チーム・データ量が増えるにつれて、品質を損なわずに全体の文脈を保ちつつスピーディーに動くことが難しくなっていきました。私たちが常に問い続けているのは、「すべてのメンバーが、それぞれの職務で 10 倍の成果を発揮するにはどうすればよいか」ということです。その問いに対する大きな鍵となったのが AI でした。これにより、中核となる原則を損なうことなく、スピードと正確性を両立できます。
「私たちが常に問い続けているのは、『すべてのメンバーが、それぞれの職務で 10 倍の生産性を発揮するにはどうすればいいか』ということです。その問いに対する大きな答えが、AI でした。」
AI によって、ご自身とチームのカスタマーサポートやプロダクト体験への取り組み方はどのように変わりましたか。
私たちは、単なる事務的な対応から、より共感のある対話へと移行するため、GPT‑4.0 や GPT‑5、o3 などの OpenAI モデルを活用した AI 会話コンパニオン「Cleo」を構築しました。
Cleo は、次の 3 種類の問い合わせに対応します。
- 情報提供: 「CRED Cash とは何ですか?」
- 文脈に基づく質問: 「私は CRED Cash の対象になりますか?」
- 取引関連:「返金はウォレットまたは元の支払い方法にできますか?」
Cleo は、問題を診断し、意図を分類し、適切な SOP にマッピングしたうえで、状況に応じた正確な回答を生成します。
また、社内向けに「Thea」と「Stark」という 2 つのツールも開発しました。Thea はサポート担当者向けのツールで、テキスト・音声・ヒングリッシュ(ヒンディー語と英語の混成言語)など複数形式の会話を要約し、次の対応策を提案します。Stark はオペレーションチーム向けに設計されており、これまで数日かかっていた SOP の作成や更新を数分で行えるようにします。
これまでにどのような成果がありましたか?
全体として、CSAT(顧客満足度)スコアが 14 ポイント改善しました。リリースから 3 か月で、Cleo の解決精度は 98% に達し、複数の意図を含む問い合わせの解決率も 18% 向上しました。また、3 つのツールすべてで平均対応時間が短縮され、セッション離脱率は 31% 減少しています。これらはまだ初期の結果ですが、非常に有望な成果です。AI を活用して顧客・エージェント・オペレーション向けに最適化された Cleo、Thea、Stark によって、信頼性・安全性・デザイン性を兼ね備えた「真のコンシェルジュ体験」の実現に着実に近づいています。
「AI の力を借りて、信頼性・安心感・セキュリティ、そして優れたデザインに支えられた真のコンシェルジュ体験の実現という目標に、着実に近づいています。」
開発の過程で最も意外だったことは何ですか?
新しい技術にはつきものですが、当初は懐疑的な声もありました。しかし、OpenAI のモデルも活用した社内評価フレームワークを通じて成果が見え始めると、チームの信頼は一気に高まりました。
最も驚いたのは、実際に AI の可能性を体感した途端に、人々がどれほど早く順応するかということです。AI を活用することで、自分たちの生産性と効率を飛躍的に高められるのだと実感するからです。
今後、CRED はどのようにしてインドにおけるプレミアムな金融体験の未来を形づくっていくとお考えですか?また、その中で AI はどのような役割を果たすでしょうか?
今後は、Cleo を全事業ラインに拡大していく予定です。さらに、ユーザーからの問い合わせに回答できないケース、いわば「データの行き止まり」を検知し、それをナレッジベースにフィードバックして SOP をリアルタイムで改善するツールの開発も進めています。
私たちのより大きな目標は、エンジニアリング、QA、インフラ、コンプライアンスなど、あらゆる部門のメンバーが 10 倍の効率で働けるようにすることです。
エコシステムが進化するなかで、成功の鍵を握るのは、いかに迅速かつ正確に行動し、ノイズの中から正しいインサイトを見極めてスピーディーに正確な判断を下せるかにあります。
AI の導入を検討しているものの、まだ踏み切れずにいる企業に対して、どのようなアドバイスがありますか?
どの企業もまず、自社にとって最も重要なものが、効率なのか、効果なのか、あるいはその両方なのかを見極めたうえで、自社の価値観に沿って AI を活用すべきです。
私たちにとって OpenAI のテクノロジーを取り入れることは、「複利的成長」と「スピードと正確さの両立」という 2 つの価値を体現するうえでの大きなブレークスルーとなりました。すでに有望な成果が出始めており、今後はその効果をさらに拡大・スケールさせていくことに注力しています。


