GPT‑5.6 Sol による量子コンピューティング実験の支援
GPT‑5.6 Sol を研究室のソフトウェアに接続し、量子チップの日常的な測定を実行・調整することで、ベアトリス・ヤンケレビッチ氏は実験設計とデータ分析に集中できるようになりました。
量子コンピューティングは、量子力学固有の性質を利用して情報を処理する新興技術です。将来的には、複雑な材料や分子をより精密にシミュレーションできる可能性があります。従来型プロセッサとは異なり、量子プロセッサは量子ビット(qubit)で構成されます。量子ビット実験の準備と実施には数カ月を要し、数百から数千回の予備測定が必要になることもあります。AI は、こうした作業を支援できる段階に近づいています。
MIT の量子工学システムグループ(EQuS)に所属する大学院生、ベアトリス・ヤンケレビッチ氏は、Codex と連携した GPT‑5.6 Sol を使い、AI で実験ワークフローを効率化できるかを検証しました。MIT の同グループは、希釈冷凍機と呼ばれる専用装置内で絶対零度近くまで冷却される超伝導量子ビットを研究しています。この量子ビットは高速に演算し、マイクロ波信号で精密に制御できます。また、一般的な製造技術で作製し、チップ上に配置できます。
超伝導量子ビットチップは作製、パッケージ化、冷却を終えると、研究者がすべてソフトウェア経由で操作します。そのため、ヤンケレビッチ氏の実験は AI エージェントの検証に適した環境でした。Codex を実験調整用の研究室ソフトウェアに接続することで、測定の実行、結果の分析、次に試す内容の決定が可能になりました。ヤンケレビッチ氏は、GPT‑5.6 Sol が日常的な測定ワークフローを自律的に完了できる場合が多いことを確認しました。これにより大幅に時間を節約でき、実験を常時監視せずに進められるようになりました。その結果、結果の分析、実験の設計、研究の次のステップの計画に、より多くの時間を充てられるようになりました。

パッケージ化された量子ビットチップ(左)は、開放された希釈冷凍機(右)の内部に設置されています。提供:EQuS グループ
相互依存する測定の連携
超伝導量子ビットは、原子と同様に特定のエネルギー準位しか取れないため、「人工原子」とも呼ばれます。マイクロ波パルスによって量子ビットを準位間で遷移させ、その量子状態を調べます。研究者は、チップに送るパルス列を設計・校正し、返ってくる信号をデジタル化して分析します。これらの測定から、各量子ビットを正確に制御するための共鳴周波数、量子情報を保持できる時間、演算に必要な設定が分かります。
量子ビットの校正では相互に依存する一連の測定が必要で、各測定の結果によって次の工程が決まります。量子ビットの特性は時折変動し、予想外の物理的挙動によって結果にばらつきが生じることもあります。経験豊富な研究者はこうした変化を認識し、状況に応じて対応できます。ソフトウェア制御、反復測定、適応的な意思決定を組み合わせる量子ビット校正は、AI エージェントの有力なユースケースでもあります。
ヤンケレビッチ氏は、未校正の 6 量子ビットチップで測定を実行する GPT‑5.6 Sol の能力をテストしました。このチップは、EQuS が製造工程のベンチマークに日常的に使用する標準型の一つです。ヤンケレビッチ氏は Codex に、各実験の実行方法と評価方法を説明する測定別のスキルを与えました。GPT‑5.6 Sol は、これらのスキルとチップの設計目標を基に測定パラメーターを選び、ハードウェアを操作してデータを分析しました。その後、測定を調整するか、次の測定で使うために結果を保存しました。
信号が明瞭な場合、Codex は研究者による介入をほとんど必要とせず、標準的な一連の測定を完了しました。量子ビットの遷移周波数を特定し、制御と読み出しに使うパルスを校正して、量子情報を保持できる時間を算出しました。

GPT‑5.6 Sol が自律的に完了した、1 量子ビットの校正測定一式。提供:EQuS グループ

GPT‑5.6 Sol が自律的に完了した、1 量子ビットの校正測定一式。提供:EQuS グループ

GPT‑5.6 Sol が自律的に完了した、1 量子ビットの校正測定一式。提供:EQuS グループ
実験信号が弱い場合やノイズが多い場合、GPT‑5.6 Sol はより苦戦しました。そのような場合、適切な測定パラメーターを見つけるまでに時間がかかり、経験豊富な研究者の助言が必要になることもありました。この結果から、現在のエージェントは明確に定義された実験ワークフローには対応できる一方、曖昧な物理的結果の解釈には依然として課題があることが分かります。
EQuS はこうした標準チップを多数製造しており、各チップの特性評価には研究者が数日を要する場合があります。現在、同グループでは日常的な測定をエージェントに任せ、研究者がほかの作業に集中できるようにしています。
ヤンケレビッチ氏は、「夜間や私がクリーンルームで作業している間に、エージェントに何時間も測定を続けてもらえます」と述べています。「スマートフォンから進捗を確認し、修正が必要な場合や別の方向性を探りたい場合には、エージェントに指示を出せます」

校正実行時の GPT‑5.6 Sol の思考の連鎖からの抜粋。提供:EQuS グループ
研究者との協働
当面の利点は、Codex エージェントが常時監視を必要とせず、研究者による実験の分析と測定を着実に前進させられることです。最適な校正設定を見つける速さでは、今も経験豊富な研究者が現在の AI モデルを上回る場合があります。しかし、校正プロセスの全工程を監視する時間を削減できるため、研究者はほかの作業に集中できます。
日常的なチップ特性評価には、比較的明確に定められたワークフローがあります。新しい実験では、ヤンケレビッチ氏は Codex エージェントに限定的な実験目標を与え、制御・分析・シミュレーション用の新しいコードを記述、修正、テストする能力をより積極的に活用しています。エージェントを研究室に直接接続することで、グループはコードを修正して実際の測定でテストし、より長い一連の作業を自律的に完了できます。
ヤンケレビッチ氏は、「測定、理論、チップ設計など、私の仕事のさまざまな部分でエージェントを導く基盤を構築してきました。それが今、本格的に成果を上げ始めています」と述べています。「複数のエージェントに異なる問題へ同時に取り組ませることができます。私は結果の解釈、実験の考案、エージェントの次のステップの計画、文献の読解や執筆といった、より高度な仕事にほとんどの時間を使っています」
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