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OpenAI

2025年9月22日

CNA は AI を活用してニュース編集室を変革

CNA 編集長 Walter Fernandez 氏にお話を伺いました。

「Executive Function」エピソード 14 が、鮮やかな緑・黄・青のグラデーション背景に白い文字で表示されている。
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「Executive Function」シリーズでは、AI を通じて変革を推進するリーダーたちの視点をご紹介しています。

Channel NewsAsia(CNA)はシンガポールを拠点とする国際的なニュースネットワークで、アジア、ヨーロッパ、米国にわたり、1 億 5,000 万の世帯と接続デバイスに情報を届けています。デジタル、放送、音声などあらゆるプラットフォームを通じて、受賞実績のあるニュースや時事コンテンツを発信しています。 

 CNA が進める AI 活用の取り組み、それが記者の働き方をどのように変革しているのか、そして AI とともに見据えるニュース編集室の未来について、Walter Fernandez 氏に伺いました。 

Walter さん、現在 CNA のニュース編集室のあらゆる部分で AI が活用されているそうですが、この取り組みを始めた当初に抱いていたビジョンはどのようなもので、それは今と比べてどう変わったのでしょうか。

私たちが AI の試行を始めたのは 2019 年で、ChatGPT が世界を席巻するずっと前のことです。その時点でも、AI がニュース編集室を変革する大きな可能性を感じていました。当時、多くの編集者は AI を補助的な技術、つまりサポート役のような存在と見ていましたが、

私は、より踏み込んだ見方をしていました。第一に、AI の能力は急速に進化しています。第二に、AI はニュース編集室の運営を根本から変えることになり、その影響は 20 年前のソーシャルメディアによる変革を上回るでしょう。第三に、AI は基盤となる中核技術になるはずです。 

ですから、CNA のビジョンを問われれば、私たちは「全面的に取り組んでいる」と答えます。それは必ずしも一番乗りをすることではなく、AI を早い段階から取り入れるということです。効果は時間の経過とともに積み重なっていくからです。早く取り入れることは重要ですが、拙速であってはなりません。私たちは 1 年をかけて AI ガイドラインを策定・改訂し、部門横断的な監督体制を整えました。さらに、人間が必ず関与するプロセスを徹底し、ニュース編集室特有のルールも定めています。例えば、ニュース報道やドキュメンタリーでは、クローン化した AI 音声や AI 生成映像の使用は認めていません。 

自己満足的なプロジェクトも容認していません。すべては現実の課題や問題解決につながるものでなければならないのです。私たちが「AI ファーストのニュース編集室」と名乗ることは決してありません。

「私たちの道しるべは常に、公共サービスとしてのジャーナリズムです。AI はその使命を果たすためのツールなのです」
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現在、AI は私たちの偽情報対策において中心的な役割を果たしており、膨大なデータから隠れたストーリーを見つけ出し、さまざまな形式や言語でコンテンツを届ける役割を担っています。

2019 年の段階からすでに試行を始めていたというのは、とても興味深いですね。AI を取り入れるというのは、まさに試行と学びの積み重ねだと思います。数ある AI 活用の取り組みの中で、代表的な事例をひとつ挙げていただけますか。

シンガポールの最近の総選挙を例に挙げましょう。その際、私たちは報道に本格的に ChatGPT を活用しました。

活用方法は大きく二つあり、まず一つ目は、記者にとっての「第二の頭脳」として機能したことです。私たちは検証済みの情報を組み込んだ社内向け GPT を構築し、記事に必要な背景や補足を提供しました。

次に、OpenAI の高度な推論モデルを使い、選挙キャンペーン、なかでもソーシャルメディア上での世論操作の動きを分析しました。印象的な事例がひとつあります。ChatGPT が、選挙期間中にプロフィール名を変更していた 2 つの不審なアカウントの間に関連性を見つけ出したのです。こちらが探索を指示したわけでもなく、想定もしていませんでしたが、ChatGPT はその異常をあぶり出し、隠れたつながりをリアルタイムで明らかにしてくれました。

これこそが ChatGPT に魅力を感じる点です。これまでのニュース編集室では不可能だったことを可能にしてくれるのです。

とても説得力のある事例ですね。有権者にとっては、選挙時に正確でタイムリーな情報を得ることが何より大切です。ただ、導入当初はニュース編集室の中でも AI ツールに対するためらいがあったと記憶しています。そこから、どのように文化を転換し、理解と受容を得ていったのでしょうか。

転機となったのは、ニュース編集室で最初の実用的なユースケースを見つけたことでした。記者たちに「一番の課題は何か」と尋ねたところ、多くの課題が挙がりましたが、中でも際立っていたのが国会報道でした。

国会の審議は長時間に及び、大変な負担となっていました。そこで私たちは「Parliament AI」を開発したのです。このシステムは 90 人を超える国会議員の顔を認識し、発言を文字起こしし、さらに検索可能な要約を生成できます。これにより、記者たちは国会報道を格段に効率化できました。

「AI が実際の課題を解決するのを目の当たりにし、誰もが納得して受け入れました。次に問われたのは、どの課題を優先すべきかでした」
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これまでにチームが 20 を超えるカスタム GPT を生み出してきたことは、驚くべき成果です。なかでも、記者がアイデアを練ったり、CNA のスタイルガイドに沿って確認したりできる汎用 GPT「Newsroom Buddy」はその代表格で、現在最も人気のある GPT のひとつになっています。

これまでのお話で感じるのは、CNA のニュース編集室はワークフローだけでなく文化まで大きく変わったということです。では今後、CNA だけでなく世界のメディア業界全体を見渡したとき、AI の導入はどう進んでいくと思われますか。

「AI をニュース編集室で活かすには、人材育成と文化が要であり、それには時間がかかります。最も重要なのは広く浸透させることです」
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CNA 全体で 500 を超えるエンタープライズライセンスを導入し、グループ全体ではさらに 2,000 を展開しています。誰もがこのツールを使っていますが、同時にトレーニングも欠かせません。OpenAI チームと協力して基礎から応用レベルまでのトレーニングを行い、ハッカソンを開催し、部門横断チームの活動も後押ししています。これは「AI チーム」だけに限られたものではなく、編集者、記者、オーディエンスチームなど、すべての人が関わっています。

アジア太平洋地域の同業者に向けて、どのようなメッセージを伝えたいですか。 

私たちは、あらゆるプロセスで AI を効果的に活用し、完全に AI に対応したニュース編集室をつくるというビジョンを描いています。AI ツールが無限にコンテンツを生み出し、わずか数分で人間の姿や声まで複製できる時代にあって、ニュース編集室を差別化する要因は、もはや言語やフォーマット、発信する媒体ではありません。「AI が生み出す粗雑なコンテンツ」があふれるなかで、本当に問われるのは、私たちが届けるコンテンツの質とその関連性なのです。 

ですから、お伝えしたいメッセージはこうです。AI は、私たちの公共サービスとしての使命を実現するうえで欠かせない基盤技術となるでしょう。ニュース編集室は、もはや「様子見の段階」をとうに過ぎていることを自覚しなければなりません。いま重要なのは、しっかりと吟味した技術基盤とプロセスの変革です。いまこそ、ニュース編集室のスタッフに AI の可能性への期待を高めてもらうべき時です。この変革は、AI が記者の仕事を効率化するだけでなく、新しい、より野心的な挑戦を可能にするという考え方を土台に進んでいきます。 

 AI を取り入れた組織に何が成し遂げられるのか、思い切って大きく考え、さらに大胆に夢を描いてください。