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OpenAI

2025年11月6日

企業

AI の進歩と提言

AI は新たな知識と能力を切り拓いています。私たちの責任は、その力を広く、そして持続的な利益へと導くことです。

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いわゆるチューリングテストの境界を越えたとき、日常が何も変わらず続いていることに、どこか違和感を覚えた人は多かったでしょう。これは、何十年ものあいだ語られてきた一つの節目でした。手の届かない夢のように思えたのが、気づけば一気に現実味を帯び、そしていつの間にか、その先にまで進んでいました。コンピュータが会話をし、難題を考えられるようになっても、世界が劇的に変わったわけではありません。優れた新製品はいくつも生まれましたが、日常は意外とそのままでした。

世界の多くの人々はいまだに、AI をチャットボットや検索精度の向上といったものとして捉えています。しかし今では、人間でも最も優秀な頭脳を持つ人たちを超える成果を出せるシステムが、知的競技のいくつかで登場しています。AI システムにはまだばらつきがあり、重大な弱点も抱えているとはいえ、こうした難題を解けるシステムは、AI 研究者の 8 割近くのレベルまで達しているように見えます。多くの人が AI を使っている範囲と、AI が現在持つ実際の能力との間には、まだ大きな隔たりがあります。

自律的に知識を発見したり、人の効率を高めることで発見を促したりできる AI システムは、世界に大きな影響を与える可能性があります。

ここ数年で、AI は(特にソフトウェアエンジニアリングの分野で)人が数秒で終えられる作業しかできなかった段階から、人が 1 時間以上かける作業までこなせるようになりました。近いうちに、人が数日から数週間かけて行うような作業をこなせるシステムが登場することが予想されます。人間が数百年かけるような作業をこなせるシステムについては、もはや想像の域を超えています。

同時に、ある水準の知能を得るためのコストは急激に下がっており、過去数年間で年間 40 倍の効率化が進んだと見積もるのが妥当でしょう。 

2026 年には、AI がごく小さな発見を行えるようになると予想しています。2028 年以降には、より大きな発見を行えるシステムが実現すると、かなりの確信を持っています(もちろん予測が外れる可能性もありますが、現在の研究の進展を見る限り、その方向に進んでいるようです)。

私たちはこれまでも、AI の進歩は予想外の形で進み、社会はその技術とともに進化する道を見つけていくものだと感じてきました。今後数年で AI の能力が急速かつ大きく進化すると予想していますが、日常生活は意外なほど変わらないままに感じられるでしょう。どれほど優れたツールが登場しても、私たちの暮らし方には強い慣性があるのです。

特に、これからの時代には、より充実した人生を送るための新しく、そしてより良い方法が生まれ、今よりも多くの人がそうした人生を実現できるようになると期待しています。もちろん、働き方はこれまでとは違ったものになり、経済の移行期にはさまざまな困難が伴うでしょう。さらには、根本的な社会経済の仕組みそのものを見直す必要が出てくる可能性もあります。しかし、豊かさが広く行き渡る世界では、人々の暮らしは今よりもずっと良いものになり得ます。

AI システムは、人々が自分の健康をより深く理解できるよう支援し、材料科学、創薬、気候モデリングなどの分野での進歩を加速させ、世界中の学生がパーソナライズされた教育にアクセスできるようにします。こうした具体的な恩恵を示すことは、AI が単に効率を高めるだけでなく、人々の生活そのものをより良くできる世界という共通のビジョンを築くことにつながります。

OpenAI は安全性の確保に深く取り組んでいます。私たちは安全性を、AI の負の影響を軽減しながら、その正の影響を最大化するための実践と捉えています。AI には計り知れない可能性がありますが、私たちは超知能システムのリスクを壊滅的なものになり得ると考えています。そして、安全性アラインメント実証的に研究することが、グローバルな意思決定、たとえば自己改善を繰り返すようなシステムに近づくにつれて、開発全体を一時的に減速し、より慎重に研究を進めるべきかどうかといった判断に役立つと信じています。当然ながら、確実にアラインメントと制御が行えない状態で超知能システムを展開すべきではありません。そのためには、さらなる技術的な研究が必要です。 

AI とともに前向きな未来を築くために役立つと私たちが考える、いくつかの取り組みをご紹介します。

先端研究機関による共通の基準と知見の共有。 

先端研究機関は、安全に関する共通の原則に合意し、安全性研究の成果、新たなリスクに関する知見、開発競争の過熱を抑える仕組みなどを共有すべきだと考えています。たとえば、AI の制御評価に関する一定の基準を先端研究機関同士が設けて合意することなども、有効な取り組みとなるでしょう。

社会はこれまでも、建築基準や防火基準を整備するために同じようなプロセスを経てきました。こうした取り組みが、これまでに数え切れないほど多くの命を救ってきたのです。

その力を社会の利益に生かし、負の影響を最小限に抑えるための、AI の能力に見合った公共の監督と説明責任のあり方。 

AI については、2 つの考え方があります。1 つは、AI は「通常の技術」と同じだという考え方です。つまり、印刷機からインターネットに至るまで、過去の技術革命と同様の進化をたどるという見方です。社会や人々には適応する時間が与えられ、従来の公共政策の枠組みで十分に対応できるだろうという考えです。この考え方では、革新の促進や、AI との対話におけるプライバシー保護、そして連邦政府と協力して悪意ある者による強力なシステムの不正利用を防ぐことなどを、優先して進める必要があると考えられています。

私たちは、現在の能力水準にある AI はすでに十分に実用段階に達しており、広く普及していくべきだと考えています。つまり、現在の AI 技術に関わる多くの開発者やオープンソースモデル、そしてその導入事例のほとんどには、既存の枠組み以上の新たな規制負担を課すべきではないということです。各州ごとに異なる複雑な規制に直面すべきではありません。

もう一つの考え方は、超知能がこれまで人類が経験したことのない形や速度で発展し、広がっていくというものです。この場合も、先に述べた取り組みの多くは必要ですが、さらに創造的な対応が求められます。このような状況が「通常の方法」では社会が適応しにくいものであるとすれば、従来型の規制によって十分に対応できるとも考えにくいでしょう。この場合は、各国の行政機関や関連機関(たとえば各種の安全研究機関など)と緊密に連携し、適切に調整していく必要があるでしょう。特に、AI が生物兵器テロに悪用されるリスクの低減(および AI を用いたその検知と防止)や、自己改善型 AI がもたらす影響といった分野での協調が重要になります。

最も重要なのは、公的機関に対する説明責任を確立することです。ただし、その実現方法は、これまでとは異なる形を取る必要があるかもしれません。

AI のレジリエンスエコシステムの構築。 

いずれのシナリオにおいても、AI のレジリエンスを支えるエコシステムの構築は欠かせません。インターネットが登場したとき、私たちは単一の政策や企業によってそれを守ったのではなく、サイバーセキュリティという一大分野を築き上げました。具体的には、ソフトウェア、暗号化プロトコル、標準、監視システム、緊急対応チームなど、あらゆる仕組みが整備されていったのです。そのエコシステムはリスクを完全に排除したわけではありませんが、社会が受け入れられる水準にまでリスクを下げ、人々がデジタルインフラを信頼し、その上に生活や経済を築けるようにしました。AI に対しても同様の仕組みが必要であり、その実現に向けて各国政府が産業政策を通じて推進力となることが求められます。

AI の影響に関する先端研究機関や政府による継続的な報告と測定。 

AI が現実の世界にどのような影響を与えているかを具体的に把握することで、その技術をより良い方向へ導きやすくなります。予測は簡単ではありません。たとえば、AI が雇用に与える影響を見通すのが難しいのは、現在の AI の強みと弱みが人間のそれとは大きく異なるためでもあります。実際に起きていることを測定することは、極めて有益な知見をもたらすでしょう。

個人の力を支えるための取り組み。 

私たちは、社会が定める広い枠組みの中で、大人が自らの判断で AI を活用できるようにすべきだと考えています。今後、高度な AI へのアクセスは、電気や安全な水、食料と並ぶ基盤的なインフラになると見込んでいます。最終的には、社会全体でこうしたツールを広く行き渡らせ、人々が自分の目標を実現できるよう支援することを指針とすべきだと考えています。

著者

OpenAI