10BedICU
10BedICUは、インドの救命救急のインフラストラクチャを改善するためOpenAIのAPIを使用しています。

インドは、医師1人当たりの患者数が多いことや地理的障壁、経済的制約が理由で、医療へのアクセシビリティの点で大きな課題に直面しています。例えば、インドにおけるがん専門医とがん患者の比率は約1:2,000(新しいウィンドウで開く)で、アメリカにおける比率1:100とはまったく対照的です。10BedICUは、これらの格差に対処するため、eGov Foundation(新しいウィンドウで開く)の取り組みとして立ち上げられました。10BedICUは、インドの救命救急のインフラストラクチャを改善し、インドで最も十分な医療サービスを受けられていないコミュニティに質の高い医療へのアクセスを拡大することを目指しています。
創設者であるSrikanth Nadhamuni氏が10BedICUのアイデアを思い付いたのは、わずか数ヶ月で症例数が2,000万件を上回ったコロナ感染症のデルタ株の感染が拡大した2021年のことでした。10万人あたりのICU病床数がわずか2.3台のインドの医療インフラストラクチャは、瞬く間に手に負えない状況に陥りました。10BedICUは速やかに対応し、公立病院にICUをセットアップし、最新の医療技術とCAREと呼ばれるテレヘルス(遠隔医療)プラットフォームを備えました。このプラットフォームは、専門医へのリモート相談を円滑化し、田舎の地域に住む人々に救命医療を届けています。
Nadhamuni氏は次のように話します。「私立病院の医療費を支払う金銭的な余裕がない大半の人々が救命医療を求め公立病院を利用するため、10BedICUは、公立病院と連携しています。10BedICUは、最先端の医療設備を提供しており、物理的な病院内のスペースなど継続的な運営コストは政府が負担しています」
この官民連携モデルにより、10BedICUはインドが緊急事態に見舞われた場合に速やかに資金を調達し規模を拡大できます。現在10BedICUは、電子カルテ(EMR)プラットフォームCARE経由で繋がっている9つの州の200件以上の病院で構成されるネットワークを有しています。
コロナの最も深刻な時期を乗り越え、10BedICUは現在、公立病院でこれまで存在しなかった継続的な専門医療を提供するためのセットアップを行っています。「10BedICUのおかげで、当院では心不全や脳血管障害、呼吸不全の患者など専門医療センターへの紹介状が必要だった患者を治療できるようになりました。質の高い医療への障壁を下げているのです」とアッサムにあるKarimganj Civil HospitalのシニアメディカルオフィサーSubranshu Bhattacharya医師は言います。
インド国内では、依然として医療従事者が不足しています。Nadhamuni氏は次のように説明します。「当社のテレヘルス(遠隔医療)ソリューションは、この格差を埋めることを目的としていますが、主要都市でさえ依然として医療従事者が足りていません。1日に医療サービスを提供できる患者数を増やすため、医療従事者の仕事を簡素化することで、AIは私たちを何歩も先へ前進させてくれます」
10BedICUは、同社のCAREプラットフォーム向けに、医療従事者の日常業務を支援できるだけでなく、インドの救命医療のインフラストラクチャを改善することもできるソフトウェアツールを開発しています。「医療のいちかばちかの環境においては、精度と正確性が何より重要です」とNadhamuni氏は言います。「OpenAIは、高性能マルチモーダル機能に加え、重要な基準を満たすために必要な安定した技術基盤を提供してくれます」
10BedICUは、個人を特定する情報を収集せず、州政府と連携し、プライバシーおよびデータに関する法律の遵守を徹底しています。新機能は、加盟州および病院と連携してクローズドでフィードバックループ形式でテストされ、新たなツールの展開はゆっくりと段階的に行われています。
10BedICUは現在OpenAI搭載の3つのツールを開発中です。
- CARE Scribe:OpenAIのWhisper APIとGPT‑4を使用するCARE Scribeは、医師と患者間のやりとりを自動的に文字起こしし、対話をEMRに入力できる構造化された情報に直接変換します。CARE Scribeは、英語、ヒンディー語、マラヤーラム語、ベンガル語に対応しているため、看護士は母国語で話すことができます。主要言語がマラヤーラム語のケララ州にある緩和ケアセンターで現在テスト中のCARE Scribeは、医療従事者がEMRソフトウェアにデータを入力するために費やしている時間を50%以上削減すると推定されいるため、医療事業者は患者と直接関わる時間をこれまでより多く持てるようになります。また医療従事者が母国語で話すことができるようになったため、CARE Scribeの活用は、質の高いデータ収集にもつながっています。
- CARE Device Connect:このツールは、古く互換性のない病院のモニターからCAREプラットフォームにデータを統合するためGPT‑4 Visionを採用しています。高解像度カメラでモニターに表示された情報を撮影し、リアルタイムでデータをアップデートすることで、CARE Device Connectは、救命医療の現場で極めて重要な患者の継続的なモニタリングを可能にします。10BedICUは、カルナータカ州の43の病院でこのツールの試験的運用に取り組んでおり、既存のICUから“スマートICU”への移行を促進するためCARE Device Connectを活用したいと考えています。
- CARE Discharge Summary:このツールにもGPT‑4が搭載されています。このツールは、シームレスかつ継続的な治療を徹底するため、患者の記録を自動的に要約します。現在インドの50の病院で試験的に運用されているCARE Discharge Summaryは、診療録が膨大な量の患者に医療を提供する場合に特に影響があり、患者1人につき医師と看護士が事務作業に費やす時間を1時間以上節約できることがあります。
「OpenAIを活用することで、10BedICUは医療を改善しているだけでなく、インドの医療インフラストラクチャを強化し、治療を必要としている人が誰でも希望の治療にアクセスできるよう徹底しています」とNadhamuni氏は言います。
マニプール州保健・家族福祉省のSapam Ranjan氏はこれに同意を示しています。「10BedICUによるAIの組み込みは、特に遠隔地において救命医療を大幅に進展させており、インドのより多くの国民が質の高い治療を受けられるようにしています」